3Mが神奈川県相模原市に設立して20年を迎えたカスタマーテクニカルセンターがその機能強化を発表したプレス説明会・見学会を行なった際、新しい研磨素材を体験する機会をいただくことができました。商品のテクノロジー詳細は本日(12月15日)発売のモーターファン イラストレーテッド Vol.135をご覧いただくとして、ここでは、まったく新しい概念で作られたその製品の能力の高さを動画でご確認いただきましょう。今回はメディアとして初の動画撮影許可をいただきました。「プロの動画はしょせんプロがやっているでしょ?」とお考えの皆さま、これを見たら納得間違いなし!
Report:生江 凪子(MFi)/Photo&Movie:3M/野崎博史(MFi)
Special Thanks:スリーエム ジャパン株式会社
3Mといえば……?
3Mと言えば……両面テープ(スコッチ)でしょ! スコッチブライト(台所で使っています)! ポストイット(机にたくさん置いてあります)! とすぐにたくさんの商品を口にすることができる、とても身近なブランドだ。もし、3Mという企業名を知らなくても、前述したような生活に寄り添う多くの商品は一度や二度ということなく使ったことがあるはず。
ただその3Mが、世界中の人々に役立つモノづくりを幅広くやっていることは、あまり知られていないかもしれない。かくいう私もそのひとり。企業は知っている、製品も使っている、でも、その全貌は想像もできないほど幅広いということを今回のプレス説明会で知ることができた。
そのひとつが、今回ご紹介する【3M キュービトロンⅡ】
金属加工用研磨材として3Mが開発した新素材のこのキュービトロンⅡがどれだけの素晴らしいのか、いくら文章にしたところで伝わらないと思いますので、モーターファン編集部・体験モノ担当(勝手にそう名乗っている)社内イチ非力なナコが動画でお伝えします。
今回は、10×15×500mm(材質:SUS304)の金属の棒を研磨ベルトで1センチ削るのにどれくらいの時間がかかるのかの体験ですが、従来品の研磨ベルトと【3Mレジンボンドクロスベルト363A】(以下、キュービトロンⅡ/キュービトロンⅡベルト)、両方同じ条件で削ったときの違いは一目瞭然。動画をご覧いただく際は、手元のブレ感、火花の散りかた、接面温度にも注目していただけたらと思います。
研究室内は、企業秘密が満載。そのため、画角が手元のみであることを先にお断りしておきます。
こちらは従来品の3Mレジンボンドクロスベルト(363A)の研磨材です。1センチを削るのに35秒ほどかかりました。ちなみに、じつはキッチリ1センチは削れていないのです。あまりに時間がかかってしまったので途中で「OKです」と……。初心者ゴルファーのグリーン上のようなやり取りがありました。
金属棒を支えているナコの腕が、研磨ベルトの回転力に圧されてブレているのがわかっていただけたかと思います。研磨ベルトは高速回転するため、きちんと支えていないと金属棒がブレて、やりながら、「恐い……やるって言わなきゃ良かった」と思ったほど。
金属を削るためもちろん火花は散りますが、従来品でのその量はかなりのもの。金属棒にこすれることで発生する熱を帯びた鉄の粉が、酸素と急速に反応することで燃焼反応を起こし火花となるわけですが、火花が散るということは熱が外に逃げていることにもなり、研磨効率を考えたとき、切削力が充分に研磨物質へ伝えきれていないことにもなります。
よって、火花の量は、少なければ少ないほど、ヨシ、ということです。
体験者・ナコに筋力がないため、研磨ベルトに対して、金属棒を直角に当てられていない、という原因もあり、終了後の研磨面は、熱灼けを起こしている上に、ナナメになってしまいました……。
熱灼けを起こすということは、研磨面が高発熱であることにも起因します。切削力が弱いと研磨面は高発熱となり、火花量も多くなるということですね。研磨ベルトとの接面が熱を帯びて赤くなっていたことも見ていただけたかと思います。
プロのかたの映像も掲載します。従来品ではプロのかたでも1センチを削るのに約20秒。ある一定量の火花も散りますし、押し当てている力が強いので、ナコの映像よりも接面が真っ赤になっていることがおわかりいただけたかと思います。
さて、従来の研磨材は砥粒の大きさや形がバラバラで、使えば使うほど砥粒のエッジがとれ、全体的に丸みを帯びてしまいます。当たり前ですが、物質を削ったら削っただけ、研磨材側も削れていきます。形も大きさもバラバラな従来品は、研磨材がベルト表面に残っていたとしても、丸みを帯びた砥粒となるため、切れ味を失い目詰まり状態を起こしてきます。するとますます切削力が落ちて……というスパイラルに陥るわけです。(次ページへ続く)
そこで、新素材・キュービトロンⅡ
そこで、新素材・キュービトロンⅡです。
キュービトロンⅡの特長は、ベルトに貼りつけてある研磨砥粒が均一で鋭利な形状なことに加えてナノレベルの集合体であること。超極小サイズの三角形がたくさん集まって大きな三角形を作り上げている、というイメージですね。
つたない表現で申し訳ありませんが……非常に大雑把に言わせていただくと、大きな三角形から小さな三角形がひとつはがれ落ちても残るのは三角形となるため、作業を進めても切削面はシャープなエッジを維持しつつ消耗していくのです。要するに研磨材そのものがツンツルテンになるまで、切削性能が持続する、ということ。イメージ図そして拡大画像を見ていただいたほうがわかりやすいですね。
それって要するにライフが長いってことだけ? いえいえ違います。
高い切削性能と高研磨性能により、低発熱での切削を実現、スピード・寿命ともに、格段の違いがあるのです。とにかく動画をご覧いただきましょう。
10秒です。ほぼ10秒で、キッチリと1センチ削ることができました。手のブレ、火花の量を従来品と見比べると、驚くほど違います。また、注目していただきたいのは研磨ベルトとの接面です。従来品のときには真っ赤になっていた接面ですが、キュービトロンⅡでは、まったく赤い部分を視認できません。それだけ低発熱だということ。
低発熱のなにがいいか、切削力をムダなく研磨物質に伝えられることはもちろんですが、熱灼けを起こさない、ということが挙げられます。削った面が非常に綺麗に仕上がるというメリットは、熱灼け処理という工程が必要なくなることを意味するのです。
従来品で熱灼けを起こさぬように研磨するのは、プロのかたでもかなり難しいということなので、ここでも、この製品の能力の高さを見て取ることができます。
35秒が10秒! 時間だけでも特筆ものですよ! プロのかたでも約10秒で削るので、キュービトロンⅡによって、非力なナコでもプロなみの作業効率となったのです。身体への負担、仕上がりの綺麗さ、作業時間短縮……キュービトロンⅡのすごさ、おわかりいただけましたでしょうか。
今後、すべての業種で高齢化社会、また女性雇用も増えていくと推察されています。
そんななか、このキュービトロンⅡを使用することはかなりの強みになると、実際に体験をさせていただき感じました。もちろん今回体験したベルト以外にも種類・サイズが豊富に用意され、用途に応じて選べます。これは、金属加工業に携わるかたには注目してほしいですね!
今回の3MさんのキュービトロンⅡの記事を含め、最新技術が掲載された、Motor Fan illustrated Vol.135『最新自動車技術総覧2017-2018』は12月15日発売です!