CX-5より大きく3列目シートを持つマツダCX-8。大型クロスオーバーSUVがミニバン全盛の日本市場にどう受け入れられるか注目が集まる。そのマツダCX-8の心臓部は、マツダ得意のディーゼル、SKYACTIV-D2.2である。このD2.2、CX-8に搭載するタイミングで大きく進化しているのだ。
5人以上の乗員がリラックスして乗車できるとなると、日本ではミニバンという選択肢が一般的だ。そこにマツダは3列シートをもつクロスオーバーSUVを持ち込んだ。新型CX-8である。北米で展開する大型SUV、CX-9のプラットフォームを使って日本国内向けに全長をCX-9の5065mmから4900mmに短縮したのがCX-8である。
国内の最上位SUVに相応しい装備と内装が与えられたCX-8。印象的だったのは、室内の静粛性の高さだ。非常に静か。さまざまなNVH対策の成果なのだが、それが奏功しすぎて、タイヤのノイズなどがかえって目立ってしまう領域もあった。第一印象だけで言えば、2WD仕様よりも4WD仕様の方が乗り心地、操縦性・安定性も優れていた。
さて、本稿で注目したいのが、エンジンである。CX-5の1680kgに対して1880kg(4WD 6人乗り)と200kg車重が増えたCX-8をストレスなく走らせるエンジンは、Skyactiv-D2.2である。このD2.2がCX-8導入のタイミングで大きく進化している。
「急速多段燃焼」とマツダが呼ぶ新しい燃焼コンセプトを採用した新D2.2は、最高出力が129kW→140kW、最大トルクが420Nm→450Nmと大きく向上している。車重が200kgも重くなったのに、JC08燃費は17.2km/ℓ(CX-5 XD Lパッケージ4WD)から17.0km/ℓとほぼ同等だ。ちなみにWLTCモードも発表されていて、市街地モード(WLTC-L)が12.5km/ℓ、郊外モード(WLTC-M)が15.3km/ℓ、高速道路モード(WLTC-H)が17.5km/ℓ、総合燃費は15.4km/ℓである。
新型(CX-8搭載のD2.2を便宜上、こう呼ぶ)と前型(CX-8以外のD2.2)の違いを見ていこう。
圧縮比は14.0から14.4へと上がっている。世界でももっとも低い圧縮比だった14.0を少し上げたのは、燃焼技術等の進化で音・振動(ノッキング回避など)の性能を満足させつつトルクも上げたい。14.0のときと同じように上死点で燃料を噴いて全ストロークを有効に使いたい。そのせめぎ合いで14.4に上がったというわけだ。
今回の「急速多段燃焼」を支えるキーデバイスは、デンソー製ピエゾ式インジェクターである。ボルボのディーゼルが採用しているi-ARTをCX-8も採用した。i-ARTは、小型化した圧力センサーを各インジェクターに組み込み、インジェクター内部の燃料圧力と温度の変化を高精度に測定し、毎秒1000回にもおよぶ燃料噴射の量と圧力、タイミングを制御するという技術だ。と言ってももちろん、ボルボと同じものを使っているわけではない。急速多段燃焼のための近接・多段・高圧を実現するためのノズルのコントロール性、噴射圧のコントロール性を改善するハードの改善はマツダとデンソーの共同開発だ。急速多段燃焼コンセプトはマツダ独自のものだ。
低負荷領域では前型が1燃焼4回のところ新型では6回燃料噴射する。最大噴射圧は200MPa。これは前型と同じだが、低負荷域では通常のディーゼルエンジンが100MPaくらいまでしか使わないのに対して、新型は150MPaあたりまで噴射圧を高めて使うのも特徴だ。排気後処理では、新型は前型と同様に尿素SCRシステムを使わずに規制をクリアできている。
過給システムも改良が加えられた。前型は大小ふたつのターボを直列に繋げて使う2ステージターボだったが、新型では大径ターボをVGターボに変更している。
新型D2.2は1880kgの車重を感じさせない。前型D2.2も十分に静かだったが、新型はそれを軽く上回るほどの高いNVH性能を手に入れた。新型CX-8、パワートレーンから見ても脱ミニバンを考えている人にお勧めできるモデルである。
MAZDA CX-8 XD L-Package
全長×全幅×全高:4900×1840×1730mm
ホイールベース:2930mm
定員:6名
車重:1900kg
エンジン:2.2ℓ直4DOHCディーゼルターボ
エンジン型式:SH-VPTS型
排気量:2188cc
ボア×ストローク:86.0×94.2mm
圧縮比:14.4
最高出力:140kW/4500rpm
最大トルク:450Nm/2000rpm
JC08燃費:17.0km/ℓ
WLTC燃費:15.4km/ℓ(市街地:12.5km/ℓ 郊外15.3km/ℓ 高速道路17.5km/ℓ)