北米仕様のトヨタ・カムリに乗せてもらう機会があった。3.5ℓV6とハイブリッドではない2.5ℓ直4モデル。アメリカ人にとっての、ごくごくスタンダードなセダン、代表的なセダンであるカムリの北米仕様はどんなクルマか。
セダンの人気が高くない日本では月間販売台数が3000台程度のカムリだが、北米ではトヨタの大黒柱であり、ベストセリング・カーの常連だ。
ちなみに2017年は
9月:3万4732台
10月:2万6252台
11月が約3万5000台
のセールスを記録している。
このカテゴリーも競争が激しい。ホンダ・アコード、そしてヒュンダイ・ソナタ、日産アルティマ、フォード・フュージョンなどのライバルに打ち勝ってベストセリング・カーの座に居続けるのは、なかなか大変な仕事なのだ。
日本のカムリは、A25A-FXS型2.5ℓ直4エンジンとモーターを組み合わせたハイブリッド仕様しか選べないが、北米ではトップグレードに3.5ℓV6、エントリーグレードに2.5ℓ直4コンベ、そして日本と同様に2.5ℓ直4ハイブリッドと、3つのパワートレーンから選べる。
価格は
3.5ℓV6モデルが3万4950$〜(約390万円〜)
2.5ℓ直4ハイブリッドが2万7800$〜(約311万円〜)
2.5ℓ直4コンベが2万4000$〜(約269万円〜)
となっている。
販売の比率は
3.5ℓV6が10%、ハイブリッドが10%、残りの80%がコンベの4気筒だという。ガソリン価格が下がると、ハイブリッドが減り、V6がその分増えるという。
3.5ℓ・V6モデルに乗ってみる
そのV6モデルに乗ってみる。もちろん左ハンドル仕様。ナンバーも付いていないから、トヨタのメガウェブ内の試乗コースで走っただけ。それでも、普通のカムリとは明らかに違うV6の力強さ、内装の豪華さ、もちろん、加速力が違うことはすぐにわかる。アメリカ人の好みは、ガソリン価格がどうあれ、V6、V8の大排気量だ。V6エンジンは、いわばイメージリーダー。たとえ販売比率が10%だとしても重要なグレードだ。
ブルーのボディカラーにブラックのルーフの2トーンがカッコいい。顔つきも違う。聞けば、北米仕様は、2種類のフロントデザインを選ぶことができるそうだ。日本でも、このスポーティなフロントデザインが選べるようになるといいのだが、片や3万台、こなた3000台では、2種類用意してくれ、というのが無理なのかもしれない。ちょっと残念だ。
2.5ℓのハイブリッドではないカムリは
次は、コンベの4気筒モデル。つまりカムリのメインモデルだ。
エンジンは、A25A-FXS型2.5ℓ直列4気筒DOHCエンジン。151kW/6600rpm
250Nm/4800rpmである。
同じエンジンを積むハイブリッド用は圧縮比が14.0に上がり、出力が131kW?5700rpm、221Nm/3600-5200rpmとなる。
熱効率はコンベ仕様が40%、ハイブリッド仕様が41%というから、ちょっと前のエンジン技術者から見たら、夢のような高効率なエンジンだ。それにしても40%超えというのは、素晴らしい、と超えて、ものスゴイ!としか言いようがない。
さて、このハイブリッドでもV6でもないスタンダートなカムリが、なんともサラっとして気持ちがいい。軽い。過剰でないフツーな感じが好ましい。「アメリカ人にとってのカムリは日本人にとってのカローラと同じ。家に大型のSUVがほかにあり、カムリもあるという人が多いんです」(エンジニア談)
まさに「食パンのようなクルマ」なのだ。もちろん、フリートやレンタカー需要もかなりあるという。アメリカ人にとっての「毎朝食べる上質な食パン」のようなクルマ、それがカムリに求められるものなのだろう。現在は、北米生産だけでは需要を賄いきれないため、日本から輸出している分もある。彼の地では、カムリはニホンシャではなくて、アメ車と信じ込んで乗っている人も多いという。
開発エンジニアに話を聞くと、パワートレーンは適材適所。アメリカのハイウェイを余裕をもって走りたい人はV6を、ごく普通に使うならコンベ。日本の交通事情ならハイブリッドが最適だ、と話してくれた。
とはいえ、こうして少し味見させてもらうとV6もコンベの4気筒もいいなぁと思う。セダンこそが自動車本来の姿、と思う身としては、日本のセダンでも、さまざまなパワートレーンが選べたら、と思ってしまった。