人気のMINIクラブマンに最強仕様となるジョン・クーパー・ワークスが加わった。しかし、このクルマにもはやジャーナリズムなど通用しない。MINIファンのための、究極の1台と言えるだろう。
REPORT◎野口 優(Masaru NOGUCHI)
PHOTO◎小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)
クラブマンだからこそ”フツー”じゃない。
JCWでも親近感を覚える”MINIワールド”
長〜〜〜い! いつ見てもこの全長の長さには驚く。とにかく細長い印象だ。かといって見慣れてしまったせいか、ちょっと前にようにデカイ!とも思わなくなった。それに今さら“カワイイ”とも思わない、微妙なサイズ感である。それでも“MINI”というネーミング自体に無理を感じつつも、親近感を覚えるから不思議だ。やっぱりキャラクターというのは大事なのだろう、そんなことを思いながら、ドアを開け乗り込んでみると、もうそこには相変わらずのMINIワールドが展開されていた。特にこのJCWの場合、黒を基調に赤のアクセントが入るなど、インテリアの雰囲気は想像していたよりも刺激的で、シートもサイドサポートがしっかりとしたホールド性を重視したデザインが見て取れるから、なかなかの本気度を感じる。速度計も280km/hまで刻まれるなど、フツーじゃないMINIというのは容易に伝わってきた。
スタートボタンを押してエンジンを始動させると、ベーシックモデルはもちろん、クーパーSとはやや異なるサウンドを発した。クーパーSのエンジンをベースに吸排気系とタービンをチューニングしたというこの2ℓ直4ターボユニットは、スポーツカー的でもなければ、高度で精密に造られたようにも感じない、本当に“チューニング”という言葉が似合うような印象で、かといって神経質になるようなレスポンスをもっているわけでもない。トランスミッションは8速ATのみ。高性能版らしくパドルシフトも備えるから“その気”にもなりやすい。
超個性的な走り。
実は今回、このJCWクラブマンの試乗は箱根近郊のワインディングに加え、仙台までの往復をこなしたのだが、全体の印象をひと言でいうなら、もはやモータージャーナリズム的な目線など通用しない、というか、評価の対象にはならないMINIならでの面白さと、クラブマンらしい安定性、そしてJCWだけに与えられた刺激が全面的にでていると思った。高速道での巡行などは、腰高のまま突進するイメージで、途中アクセルを多めに踏み込んでみると、ターボ効果によって、まさに“ビューン”とワープするように加速する。けっして空力が効いて路面を這うように走行などしない。それに2670㎜というホイールベースのおかげ(?)で、後輪側が一歩ずれてレーンチェンジするようにも感じるなど、とにかくユニークな走りを体験させてくれる。それでも、このロングホイールベースにより直進安定性は高いから、まっすぐ走るぶんには大きな不満など残らないだろう。
それよりも意外だったのは、コーナリング性能だった。走行モードをスポーツにして、それなりに攻めてみると前作よりもはるかに出来が良くなっていることが判明。35扁平の19インチサイズということもあるが、適度に硬められた足まわりと4駆のおかげもあって意外にも曲がる! 以前なら後輪が遅れてついてくる印象だったが、最新型は多少のズレこそ感じるものの、思いのほか“すっ”とついてくる。それゆえに安定感も得られるのだが、やっぱりシート高とエンジン搭載置による腰高感が常に伴うため、いわゆる人馬一体などと表することは不可能。しかし、これが面白い理由でもある。
つまり、あくまでも“企画もの”であり、“純正チューニング”の極みでもあるということだ。これが3ドアのJCWならバランスよく仕上げられることもあって“ゴーカートのような走り”などと言えるのだが、クラブマンの、しかもJCWとなれば、嘘でもそんな表現は使えない、というのが本音。ならばオススメ出来ないのかと言いうと、それは違う。こういった“変わりもの”を好物とする人にのみ受け入れられる、他では絶対に見られない“変態性”が何よりも魅力的なのである。
【SPECIFICATIONS】
MINI ジョン クーパー ワークス クラブマン
■ボディサイズ:全長4270×全幅1800×全高1470㎜ ホイールベース:2670㎜ ■車両重量:1550㎏ ■エンジン:直列4気筒DOHCターボ 総排気量:1998cc 最高出力:170kW(231ps)/5000rpm 最大トルク:350Nm/1450-4600rpm ■トランスミッション:8速AT ■駆動方式:AWD ■タイヤサイズ:225/35R19 ■燃料消費率(JC08モード):14.2km/ℓ ■車両本体価格:523万円(税込)