スバルは自動運転につながる高度運転支援技術の開発を進めるために、北海道美深町にあるスバル研究実験センター美深試験場に、あらたに高度運転支援技術テストコースを設けた。ここで、アイサイトのさらなる進化、自動運転技術開発が進められる。完成を機に、報道陣に初公開した。
北海道中川郡美深町仁宇布地区。びぶかちょう・にうぷ地区と読む。
ここは、ハルキストの聖地のひとつと言われている。村上春樹の『羊をめぐる冒険』の後半に登場する「十二滝町」が、仁宇布の「十六滝」から来ているのは、そしてそのイメージが小説の中の町のイメージとぴったり重なるので、仁宇布がモデルとなったのではないか、と言われているのだ。
旭川から北へ約2時間半。その美深町仁宇布地区に、スバルの「スバル研究実験センター美深試験場」はある。北海道にテストコースを持つ自動車メーカー、部品メーカーは数多いが、このスバル研究実験センター美深試験場は、そのなかでも最北の地にある。羊をめぐる冒険を読んだことがある方なら、どんな場所なのか想像できるだろう。
冬季にスバルがこの地で試験を開始したのは、1977年。いまから40年前のことだ。美深の一般道で始まった冬季の試験は、1995年に正式な開発拠点として美深試験場となり、それ以降施設を拡充してきた。目的は、寒冷地における性能評価や雪上試験が主だった。
総敷地面積は361ヘクタール。ここに各種試験路やハンドリング路、2003年には高速周回路も増設し、実際の公道に見立てたテストコースとして、現在では、通年にわたって使っている。
その美深試験場に「高度運転支援技術テストコース」が完成したのを機に、報道陣に初公開された。スバルが美深試験に、運転支援技術の高度化に向けた技術開発、つまり将来の自動運転技術の開発のために改修するという発表は今年の6月にすでにしていた。

コースの説明を行った柴田英司自動運転プロジェクトゼネラルマネージャーは、「私は1998年からステレオカメラ(アイサイト)の開発をやってますが、こんな立派なテストコースができるなんて、始めた頃には考えられなかった。これでアイサイト、高度運転支援技術の開発は加速します」と話していた。
スバルが誇るアイサイトは、2017年中に、ロシア、中東、アフリカ、中南米、アジアへも展開がスタートし、名実ともに世界中のスバルにアイサイトが搭載できるようになるという。
今年8月からアイサイトツーリングアシストが発売になった。自動アクセル・自動ブレーキに加えてステア操作の自動化もアイサイトの技術に加わったわけだ。ステアの要素が入ると、開発の際に考えなければいけない想定シナリオが加速的に増えるという。ここでも新しいテストコースが大いに役立つことだろう。
スバルは、あくまでも「ぶつからない技術」の開発、進化を目指していて、その究極の目標は「自動車事故ゼロ」だ。ドライバー中心の安心で愉しい自動運転技術を目指すのであって、けして無人運転が目的ではない。
「高度運転支援技術テストコース」の概要
高速周回路 全長4.2km(既存の高速周回路を実際の道路に近づけるように改修)
・都市間高速道路本線にある「緩やかなカーブ」の新設
・都市間高速道路のインターチェンジやサービスエリアを想定した「分合流路」の新設
・4車線の道路を想定した「多車線路」の新設
・北米のフリーウェイを模した「コンクリート舗装路」の新設
市街地路
・片側1車線・対面通行を想定した市街地路の新設
・交差点での右折レーンの有無や導流帯など、現実に即した形状の道路の再現
・欧州を中心に普及している「ラウンドアバウト」を再現
その他の試験設備
・総合試験路の拡張と機能追加、並びに場内道路の拡張
・併せて作業や執務を行なう業務棟を立て直した
新しい「高度運転支援技術テストコース」を、仁宇布の地元の人たちは「仁宇布ニュータウン」と呼ぶそうだ。仁宇布地区には信号機が1基しかない。「高度運転支援技術テストコース」に設けられた2基の信号機が加わって、仁宇布地区の信号機は3基になったのだ。