『モーターファン・イラストレーテッド』132号の特集は「ライトサイジング」です。
今も昔も、エンジンに求められる重要な指標はパフォーマンスです。馬力が早期に得られるように、その際には燃料をできるだけ消費しないように、エンジニアは知恵を絞ってきました。ダウンサイジングという言葉が人口に膾炙し、だれもが高効率のアイコンとして認識できる世の中になっています。
ところがモード燃費値と実用燃費値のあまりにかけ離れた現実に加え、フォルクスワーゲンのディーゼルゲートがとどめを刺しました。高効率と言っているけどじつは乗せられているだけなんじゃないかと。担ぐとは言い過ぎだとは思いますが、ある一定条件の元では高効率性能を遺憾なく発揮できるというのは正解です。そのある一定条件(走行モード)を外れてしまうと、多くのエンジンは所期の性能を発揮しなくなります。じゃあそこも穴埋めしよう──といかないのが内燃機関の難しいところ。あちらを立てればこちらが立たず、両方にいい顔をしたければもっと金をよこせ──あるいは知恵を絞れ──ということになってしまうのです。
実際の走行シーンにより近づけたモード(WLTP)、そして限りなく実走行に近似したモード(RDE)と、外堀はどんどん埋まっていきます。さらにCO2排出量規制はより厳しくなり、自動車メーカーは抜本的な対策を打たなければクルマの売れ行きに大きく影響が出てしまう。そこで各社がとった対策が大きくふたつ、電動化と、ライトサイジングです。
ライトサイジングという言葉はどうやらアウディが最初にリリースやらで使い出した言葉で、ダウンさせすぎたからライト(right=正しい容量)にするという概念。直列4気筒のEA888型エンジンの1.8ℓ版の行程を延長して2.0ℓとし、相対的に長いストロークを利用してミラーサイクルでの高効率化を図ろうというのが狙いのひとつ。同じグループのフォルクスワーゲンも、再量販帯のEA211型直列4気筒エンジンの1.4ℓ版を、やはり同じく行程延長で1.5ℓとしています。
ただ個人的には、やりすぎて無理をさせたから戻すという後ろ向きな考え方に、よりによって自分で「ライト」とか言ってしまうところに違和感がありました。基本スタンスがミラーサイクルによる中低速域の高効率化というのも合わせて、なんだか全体的にうしろ向きな印象も気になった一因でした。何がライトなのか、ちゃんと調べてみたいなと考えたわけです。
そのあたりを包括的に押さえているだろうなと踏んだエンジニアリング会社数社に取材を依頼。そのうちの一社のエンジニア氏に話を聞いたら「ライトサイジングっていうのはもしかするとウチから言い出した言葉かもしれません」とおっしゃる。なんと。しかも当方のライトサイジングに対する「うしろ向きの印象」というのは、彼からすれば疑問符がつき、お話をよくよくうかがってみればライトサイジング×ミラーサイクルというのは防御の方策ではなく、完全に強烈な攻めの一手だったことが判明。驚きました。
というわけで少し認識を改めたこともあり、じゃあ実際にクルマを走らせてみようと思い立ちます。パワートレインに大きな負荷を与えられるような走行シーンで、排気量違いの2台を走らせてデータロギングし比較してみたらどうだろうと企図、いろいろ考えた結果、BMW3シリーズの2台(318iと320i)を日本のノルトシュライフェ・ターンパイクに持ち込んでみることにしたのです。
このほか、ライトサイジングではなくちゃんと「ダウンスピーディング」と当初から言っていたマツダにも話を聞きたいと考えていましたら、ご存じSKYACTIV-Xの発表。ライトサイジングどころじゃないエンジン技術の大型案件です。こちらは急遽第1特集に持っていかれてしまいました(笑)。
本日発売です。ぜひお手に取ってご覧ください。