starthome-logo 無料ゲーム
starthome-logo

TOYO TIRESが開発した「noair」に世界初試乗!


TOYO TIRESは、次世代のモビリティ社会の変化に対応するべく、エアレスタイヤ「noair(ノアイア)」を開発した。そして実用化の目処に近づいたことを証明するために、一部の報道陣を招いて世界で初めてエアレスタイヤ試乗会を開催。その開発背景から構造、そして試乗した印象までをレポートする。




REPORT◎野口 優(Masaru NOGUCHI)


PHOTO◎小林邦寿(Kunihisa KOBAYASHI)

次世代に向けたタイヤ革命

実に130年にも及ぶタイヤの歴史。言うまでもなくタイヤは、ゴムを基本素材として、その中に空気を充填して使用するのが常識だ。一部の重機などを除けば、これは当たり前のように未だに続いているが、現在一部のタイヤメーカーは将来に向けて“タイヤ=空気”という概念を捨て、次世代に向けた“エアレスタイヤ”の開発に着手している。だが、実際には商品化にはほど遠く、課題が残るばかりでなかなか進んでいないというのが実情だ。ところが、ここにきてTOYO TIRES(東洋ゴム工業)は、まだテスト段階ではあるものの、実用化の目処に近づいたことを公表した。その品名も「noair(ノアイア)」という。




実のところTOYO TIRESは、このエアレスタイヤの開発を2006年より着手しており、毎年のように改善・改良を重ね諦めずに進めてきたメーカーだ。その甲斐あって今回の発表に至ったのだが、開発の行程は実に六世代にも及んだという。困難だった理由は、従来型のタイヤに求められる条件をすべて満たすためで、乗用車への適応を目指していることから、加重性能、駆動・制動性能、乗り心地、操舵・安定性の4条件をクリアする必要があった。構造的には、ゴムは外輪のみで、そのゴムとホイールとの間にスポークを設けて製作することから、このスポーク部の設計が困難だったと語る。




要するに、車重を支えることはもちろん、路面からの衝撃や、走行安定性を得るためには、このスポーク部のデザインがすべての鍵を握るということだ。TOYO TIRESは、様々な試行錯誤を繰り返す中、Y字型や楕円形スポーク型を試みた後、ようやく到達したのがX字型だったという。第五世代で試した楕円型では、内径リングと外径リングの間に中間リングを設けて衝撃対策や安定性を狙ったものの、スポークへの荷重を低減させると同時に接地圧の分散や打撃音を見直す必要があったことから、今回の“X字型スポーク構造”にたどり着いたと公表。そのヒントとなったのは折りたたみ椅子で、路面からの衝撃をバランスよく分散させるにはこのデザインは最適だと判断し、それを試したところ理想に近くことができたと開発陣は語る。

構造と特徴、そして社内テスト結果。

特殊な樹脂スポークを採用した「X字型スポーク」。内から外側に、一方はその逆に向かって長めの距離をとることで荷重を支持する力を確保し、耐久性も向上させている。これをX字型になるよう交互に交差させているのがこのエアレスタイヤの重要となる部分だ。

この構造を簡単に解説すると、先のX字型スポーク部は、タイヤの基本構造を構成するために高剛性の特殊な樹脂製スポークを用いて荷重に対応。一方、外側の路面に接地するトレッド部には従来のようなゴム素材を使用することで、“走る、曲がる、止まる”を成立させている。さらにこのスポークとトレッドにかかる荷重を低減させるために、外径リング内にCFRP(カーボン繊維強化プラスチック)で補強することで、TOYO TIRES独自の支持構造形態を実現し、耐久力を向上させたという。また、過去の試作品から改良を加え、スポーク本数を100ピッチ(倍増)に改めたことにより接地圧の分散と、スポークの打撃音を緩和させることに成功し、静粛性をも従来のタイヤに近づけたという。

TOYO TIRESが独自に開発した「X字型スポーク」のアップ。

TOYO TIRESの開発陣によれば、この「noair」の耐久性は適応法規をクリアし、騒音に関しても空気入りタイヤの適応法規に近い+1dB(A)に近づいているうえ、転がり抵抗に関しても同社の市販タイヤ比で25%、ウエットでの制動距離も4%良好だという。これは、独自の材料設計基盤技術を駆使して完成した、同社のNano Balance Technology(ナノバランステクノロジー)を配合した、低燃費トレッドゴムを採用したことによる成果でもあると加える。とはいえ、重量面では過去の試作品よりは軽量化されているものの、それでもまだ重いのは否めない(比較対象 空気入りタイヤ「TOYO TEO+」155/65R13+4.5J×13、空気圧200/220kPa=5.5kg:エアレスタイヤ 外径540mm/幅140mm、リム14インチ相当=7.8kg)。だが、これまでの経緯から見れば、徐々に軽量化されているから、この先は十分にクリアする可能性はありそうだ。

想定シーンと完成度。

この「noair」の目的は近未来のモビリティに対応するためだ。例えば、電気自動車のシティ・コミューターを使用したカーシェアリングを想定した場合、可能な限りリスクを低くする必要がある。その時にエアレスタイヤを装着していれば、空気を入れる必要がないことからパンクとは無縁となるだけに、ほぼメンテナンスフリーとなると同時に非スペアタイヤ化を実現できる。しかも環境対策及び安全支援などにも貢献するため、エアレスタイヤの実用化は、むしろ望まれているのは確かだ。

実際に乗った印象は、先にも触れたデータとは、やや異なるというのが本音。確かに、かなり従来のタイヤに近いとは思う。試乗車は、スズキ・アルトと、未来のカーシェアリングを想定して造られた日本製の小型電気自動車(FOMM)の2台だったが、特にアルトの場合、乗り心地はやや硬さを伴うし、ロードノイズも若干ではあるが大きい。ハーショネスやワンダリングも微妙で、全体的に“あと一歩!”という完成度だろう。TOYO TIRESの開発陣が提示してくれたデータと自分で運転したフィーリングには誤差が見られ、その中でも応答リアリティやニュートラル感に関しては、だいぶ差があったのは否めない。この2点に関しては、社内評価では高かったようだが、少なくとも私の印象では、全体的に希薄で不安が残るというものだった。

しかし、ブレーキ性能は予想を超えていたのも事実。わずか40km/hからの制動テストではあったが、意外にもしっかりと止まった。さすがにX字型スポークは功を奏しているようで、剛性感が高い。逆にいえば、剛性感が高すぎるゆえ、硬い乗り心地になっているとも言えるのだが、このバランスをとるのが難しいのだろう。本当にあと一歩という印象だ。全体的にまだまだ課題は残されてはいるものの、これまでエアレスタイヤを確実に進化させてきたTOYO TIRESの成果を知れば、必ずや成し遂げるはずだ。それにシティ・コミューターでの使用を主として考えれば、実用度の可能性はかなり近いと思う。




それにしても樹脂製のスポーク部を活かしてカラーリングするとはなんと粋なことか。これを出来るのもエアレスタイヤならではだろう。実用化されれば、クルマの機械感が薄れるうえ、街を彩り楽しくさせてくれそうだ……。

このトレッドパターンは、あくまでも展示用。ユニークなデザインだ。
テスト車両のトレッドパターン。まだまだ試作段階である。


    Loading...
    アクセスランキング
    game_banner
    Starthome

    StartHomeカテゴリー

    Copyright 2024
    ©KINGSOFT JAPAN INC. ALL RIGHTS RESERVED.