去る2019年3月5日から17日まで、世界5大モーターショーである第89回ジュネーブショーが開催されました。多くの新型車やコンセプトモデルが発表される中、個人的に思わず唸ってしまったのが「メルセデス・ベンツが、V型12気筒エンジンの生産を2019年をもって終了する」というニュースでした。
重い、長い、燃費が悪いなどの欠点を抱えつつ、卓越した最高出力や最大トルク、滑らかなフィーリングで多くのブランドの「最高級エンジン」として君臨していたV型12気筒エンジン。しかし、ターボ技術の向上や、環境への配慮からダウンサイジング化が進んでいる今、V型12気筒エンジンの生産から撤退するメーカーが増えるのは避けられないと言えるでしょう。
今回ご紹介するのは、V型12気筒エンジンを搭載した数少ないアルピナ、「B12 5.0」です。筆者の住むドイツの首都ベルリンでは、アルピナはかなり希少な存在で、東京の方がまだ日常的に見かける機会が多いように感じます。今回は、アルピナB12 5.0の魅力に改めて迫っていきたいと思います!
ベースとなったのは2代目7シリーズ
アルピナB12 5.0が生産されていたのは、1988年から1994年にかけてのこと。その間に生産された台数は、わずかに305台という希少車です。ベースになった車両は、BMW7シリーズの2代目モデルとなるE32型。その中でも、V型12気筒エンジンを搭載した「750i」、またはロングバージョンである「750iL」を元に開発されました。
この「750i」「750iL」に搭載されたエンジンは、戦後初めてドイツで生産された乗用車用V型12気筒エンジンでした。戦争から40年以上が経過して、ようやくドイツ車にV12エンジンが帰ってきたのです。E32型はフラッグシップモデルの名に恥じない、流麗かつ洗練されたボディラインが特徴で、空気抵抗係数(Cd値)は0.32を達成しています。