暖かくなってくると、どこからともなく流れてくる怪談や怪奇現象。とくにクルマに関わる怪談は、枚挙に暇がありません。はたして本当に話の通り、心霊や亡霊といった人でない者の仕業なのでしょうか?
「タクシーの後部座席に乗った乗客が、走行中に消える」といった、しっかりとした目撃者のいる事例は検証が難しいので、ここでは「トンネル内を走行中、ぼんやりと光る人間を見た」や、「クルマがカーブの向こうに引き寄せられ、ステアリングもきれなかった」など、ドライバーが走行中に体験した不可解な現象を検証してみたいと思います。
怪奇現象の主な要因は高速道路催眠現象
見通しの良い道路上を運転中、居眠りをしていたわけでもないのに、突然、現れた前走車に追突してしまった。あるいは前方に故障車があると認識できていたにも関わらず、吸い込まれるように追突してしまった…。そのような事故の話を、耳にしたことはないでしょうか。これらの多くは高速道路催眠現象(HighwayHypnosis:ハイウェイヒプノシス)」により発生した事故だと考えられます。
高速道路催眠現象とは急なカーブや信号がないといった、運転操作の少ない環境を走行し続けることで、眠気の誘発や意識の鈍化が引き起こされる現象です。回りからはちゃんと運転しているように見えますが、実は注意力や判断力を欠如した、いわゆる「うわのそら」に陥っています。
先に挙げた「クルマがカーブの向こうに引き寄せられ、ステアリングもきれなかった」という怪奇現象は、この高速道路催眠現象が起因となった事故だと思われます。運転意識がひどく鈍化した状態にあると、前走車のブレーキランプや遠くにある目立った建物など、注意をひいた物体や光景へと無意識に向かってしまうことがあります。上記の例ならば、カーブ向こうの景色に注意をひかれてしまったのでしょう。途中で何となく「おかしいな?」と感じてステアリングを戻そうとしても、高速道路催眠現象から脱していない状態にあると引き続き注意をひいた物体に向かおうとします。これが「ステアリングがきれない」といった現象の正体です。