全国津々浦々、クルマで出かける機会の多い筆者。車中泊は企ててそうなるというより、図らずもそうなってしまうという類のものだったりします。
東日本大震災以降、クルマが移動手段であることに加えて、自分の居場所として捉えられることが少なくなくなりました。そのような潮流に着目しているのは何も自動車業界や、自動車関連業界ばかりではありません。自治体も着目しだしているのです。
つくばVAN泊2019
茨城県つくば市の主催で開かれた「つくばVAN泊」。この名前は世界広しといえど、つくば市でなければつけることはなかったに違いありません。しかし、たちどころに何を目指し、何がしたいのかが広くわかるイベント名。とても素晴らしいと思います。式次第を見るとビッチリと組まれたトークセッションの類。車中泊のイベントにしては妙にアカデミックな雰囲気を感じたものでした。
それもそのはずです。このイベント、長いこと遊休地になっていた地元の自動車ディーラーや、エネルギー関連を多数手掛ける関彰商事が所有する土地を、いかにして活用するかを筑波大学の学生が教材として揉んだ結果、今回のイベントが開催される運びとなったのだと言います。まさに産官学のタッグで実現したもの。しかし、学術的な高みに立って論じるのではなく、実践が最大の価値であり、それこそが前進し、広めるための最大の原動力だということはイベントの端々から感じることができましたし、訪れた人であれば感じ取ることは決して難しいものではないと言えるでしょう。
車中泊は流行でもなんでもないのです。何のために車中泊をしているのか。車中泊の先に何があるのか。問題はそこなのであって、よくあるイベントとは少し違うというか、販促推進イベントではなく、啓蒙である点がこのイベントの最大の特徴ではないでしょうか。
全員で連れ立って、示し合わせてするようなことでもないのではないか、とさえ思わせるのが、このVAN泊なのでした。そして、一人の実践が共感や共創をもたらし、広がることで社会的なインパクトを与える。