クルマのシート位置とそのクルマがつくられた目的とは密接な関係がある。
「知ってるよ、スポーツカーはシートが低いんでしょ?」という読者もおられるだろう。
たしかにそのとおりだが、「それだけ」ではない。
だから今回はシートの話をしてみよう、と思う。
スポーツカーのシートレイアウトはこうなっている
まずスポーツカーだが、知っての通り、シートの位置は低い。
これはなぜかというと、単純に「重心を下げる」ためだ。
重心が下がるとコーナリングでの安定性が増す。
だからスポーツカーのシート位置は低い、というわけだ。
だが、ボクが今回主張したいのは「シートの高さ」ではなく「シート左右の距離」だ。
つまり運転席と助手席との距離だが、これは非常に重要だと考えている。
たとえば、これはロータス・エキシージの室内だ。
シート左右が触れ合わんばかりに接近していることがわかると思う。
これは何もエキシージの車幅が狭いからではなく(エキシージの全幅は1800ミリもある)、ロータスがその哲学に基づき、重量物を車体中央に集めようとしてるためだ。
シート自体はそう重いものではないが、これに人が座るとなると話は別で、そうとうな「重量物」となる。
だからロータスはその「重量物」を車体中央に集めようとしたわけだが、この距離はシフトチェンジを行うと、隣に座る人に自分の肘が当たるほどである。
そしてマクラーレンもシートがかなり中央に寄っているクルマだ。
たとえば「570Sクーペ」の全幅は1915ミリであるにもかかわらず、シートとシートとの距離は軽自動車規格のスズキ・ジムニーよりも狭い。
これも重量物を中央に集めたいというマクラーレンの意向が反映されたものであり、マクラーレンは以前に「F1」でセンターシートを採用したことでも知られるほど重心の適正化にこだわるメーカーだ。
これらロータス、マクラーレンはボクの知る限り、もっとも左右のシート間が狭いメーカーでもある。
余談だが、フェラーリ、ランボルギーニもかなり左右シート間が近い。
参考までにだが、かのレクサスLFAもここにこだわり、左右シート間の距離は72ミリしかない、という。
なお、左右のシート間が近いということについて、運転している限りは不便を感じることはない。
ただ、駐車場などで発券機を利用する場合は注意が必要だ。