ヘッドライトはディーラーやカー用品店などで交換できますが、業者によって工賃に差があるうえに、ヘッドライトのタイプによっても交換費用が異なります。そのため、事前に各業者の特徴や自身の車に適したヘッドライトの見分け方を押さえておくことで、安心してヘッドライト交換を行えるようになります。
本記事では、ヘッドライト交換について知っておきたい情報を、自動車整備士・若林由晃さんの解説をまじえてご紹介します。
- バルブはおもに3種類あり、種類によって交換費用が異なる
- メーカー保証を使えば無料で交換できることも
- 光量不足はヒューズや黄ばみが原因の場合もあるため、交換前に確認を
ヘッドライトはどこで交換できる?各業者の特徴と費用を徹底比較!
ヘッドライトの交換は、おもにヘッドライト自体の交換と、バルブと呼ばれる電球の交換があります。
どちらもディーラーや整備工場などに依頼できますが、業者によってメリット、デメリットが異なるため、事前に各業者の特徴を知っておくことが重要です。
まずはヘッドライトの交換ができる業者と、それぞれの特徴を見ていきましょう。
なお、ここで紹介する工賃は、ヘッドライトのバルブ交換1ヵ所の金額です。
〈ヘッドライト交換の費用と業者の特徴〉
依頼先 | 工賃の目安 | 特徴 |
---|---|---|
ディーラー | バルブ交換:5,000円~10,000円程度 | ・一定の技術力を有している ・原則として修理には純正部品を使用する ・費用相場は高い傾向がある ・エーミング作業が可能なケースが多い(外部に委託するケースもある) |
整備工場 | バルブ交換:2,500~3,000円程度 | ・費用相場はディーラーよりも安いケースがほとんど ・予算や目的に応じた柔軟な対応が期待できる ・技術力や工場の規模、強みは工場によって異なる |
カー用品店 | バルブ交換:2,000円程度 | ・ディーラーや整備工場よりも費用相場が安い ・店頭の商品から好きなパーツが選べる ・ユニット交換など高度な修理には対応していないケースもある |
ガソリンスタンド | バルブ交換:2,000円程度 | ・給油のついでに修理を依頼できる ・対応する部品を持っていないことも ・費用相場はカー用品店と同程度 |
ディーラー
ディーラーはメーカーがブランドイメージを保つために一定の技術力を確保していることがほとんどで、信頼性が高く安心して任せられるのが大きな魅力といえます。基本的に部品が確保されているので、当日の問い合わせでもすぐに対応してもらえるケースが多いです。
自宅への納車サービスや無料洗車などの手厚いサービスが受けられるのもディーラーのメリットといえますが、一方で工賃の設定は高めであり、パーツも原則として純正品を使用するので修理費用の相場は最も高額といえます。後述するエーミングに対応しているディーラーも多く、その場では設備がなくてできない場合でも外部に委託する形で受け付けてくれるケースがほとんどです。
整備工場
街なかの整備工場も選択肢のひとつです。地域に根差したサービスを提供する店舗が多く、地域特性を考慮した整備の提案をしてくれるのがメリットといえるでしょう。
ディーラーと提携している、熟練の整備士がいるなど技術力が高い工場も多くある一方でカスタマイズをメインとしている工場もあるなど、技術力や規模、特徴が工場によって異なります。なお、部品には必ずしも純正品を使うわけではなく、予算や目的に応じて柔軟に対応してくれるケースが多く、相談しやすいのも整備工場の特徴です。
カー用品店
カー用品店の中にも車検や整備を行う店舗があり、そういった場所ではヘッドライト交換の依頼も可能です。費用相場は整備工場と同等か、若干安いケースが多い傾向があります。
カー用品店では、店頭の豊富な商品の中から修理に使用するパーツを選べるのが魅力です。商品知識が豊富なスタッフと相談しながら条件に合うものを探すこともできるでしょう。ただし、ディーラーや整備工場のような高度な修理などには対応していない店舗もあります。
ガソリンスタンド
ガソリンスタンドもカー用品店と同等の、比較的安い費用相場でヘッドライト交換ができます。行きつけのスタンドで給油のついでなどに気楽に修理が依頼できるので、忙しくて整備工場やディーラーに行く時間が取りにくい方や、工場などは気後れする、という方にも利用しやすいでしょう。
ただし、すべてのガソリンスタンドでヘッドライト交換ができるわけではなく、修理や整備に対応していないスタンドもあります。また、ガソリンスタンド自体は24時間営業であっても、修理受付の時間は限定されているケースもあります。
ヘッドライトユニットの交換をする際は、業者選びに注意が必要です。詳しくは後述しますが、運転支援システム付きの車両の場合、バンパーなどの脱着を伴いエーミング作業が必要になります。エーミング作業ができるディーラーや整備工場を探して依頼しましょう。
ヘッドライトの種類別、特徴と価格の目安
ヘッドライト交換の際は、工賃のほかに交換用バルブの部品代も必要になります。ヘッドライトのバルブはおもに「ハロゲンランプ」「HID」「LED」の3種類があり、特徴も価格もそれぞれ異なります。
自身の車のヘッドライトがどの種類にあてはまるのか、価格の目安と併せてチェックしておきましょう。
ハロゲンランプ
・特徴
ハロゲンランプは、1990年代にHIDが登場するまで、ヘッドライトのほとんどに使用されていたタイプです。フィラメントと呼ばれる電球の中にある細い線が発光することで、対向車に優しい淡い暖色系の光を放つのが特徴です。
雨や霧の中でも前方を明るく照らすことが可能で、比較的安く入手でき、自分で交換することができるのもメリットといえるでしょう。一方で、HIDやLEDほどの明るさはなく、消費電力が多い上に寿命が短いというデメリットもあります。
・価格の目安
片側1,000~4,000円
ハロゲンランプをディーラーで交換する場合は、純正のハロゲンランプを使用することで部品代が高めになることがあります。一方、カー用品店では店内商品から安めの種類を選ぶことも可能なため、メーカーなどにこだわらない場合はコストを抑えることができるでしょう。
HID(High Intensity Discharge lamp)
・特徴
HIDは高輝度放電ランプともいい、1990年代に普及が始まりました。ハロゲンランプのようにフィラメントがなく、空中放電を起こすことで発光するため、寿命が長いのが特徴です。
HIDはヘッドライトのバルブの中で最も明るい光を発し、消費電力も35〜55Wと省電力です。さらに、カラーバリエーションが豊富という魅力もあります。一方で、点灯してから最大の光量に達するまで5〜10秒ほどかかるため、ハイビームを多用する場合には向いていないでしょう。
・価格の目安
片側2,000円〜20,000円
HIDは電圧の負荷が大きく、交換作業を誤るとほかの電気系パーツが焦げたり、スパークして火災を引き起こしたりする危険性があり、交換には専門知識が必要になります。そのため、工賃がほかのバルブよりも高くなる傾向があります。
また。ヘッドライト本体をハロゲンランプからHIDへ交換したいケースでは、専用のキットが必要になるため、50,000円ほどになる可能性があります。
LED(Light Emitting Diode)
・特徴
LEDとは、発光ダイオードを使ったライトのことをいいます。寿命が長く、最大で15年ほど発光し続けるため、車を購入してから手放すまで一度も交換する機会がない可能性もあります。消費電力は約20Wと少なめで、発熱もほとんどありません。
明るさはHIDに劣りますが、点灯後すぐに最大の光量に達するためハイビームにも向いており、現在はLEDがヘッドライトの主流になりつつあります。普通車はもちろん、軽自動車においても多く採用されており、上位グレードでは標準装備であるモデルも少なくありません。
・価格の目安
片側3,000円〜20,000円
LEDは本体と一体化しているタイプが多く、バルブのみの交換ができるタイプは多くありません。ヘッドライトユニット全体の交換となると、交換費用は10万円を超えるケースがほとんどです。輸入車など元々車両本体価格が高い車の場合は、数十万円以上かかるケースも存在するので、車の使用年数などによっては乗換えも視野に入ってくる可能性があります。
明るさのあるHIDはディスチャージランプ、キセノンランプとも呼ばれ、かつては人気を博しました。しかし今ではLEDの性能が上がりHIDに負けない十分な明るさを確保できるようになったこと、またデザインの自由度が高いこと、登場時よりも価格が安くなったことからLEDに置き換わりつつあります。
メーカー保証を使えば無料で交換できる
ヘッドライトの交換は、バルブのみでも約3,000円〜15,000円、ヘッドライト本体を丸ごと交換するとなると、タイプによっては50,000円以上の費用が掛かり、大きな負担となります。
ただし、新車で購入した場合には、メーカー保証の期間内であれば無償でヘッドライトを交換してもらうことができます。また、中古車でも中古車販売店が保証する期間内であれば、無料での交換が可能です。特にディーラーで購入した中古車の場合はディーラー保証が付いていることもあるため、ヘッドライトの交換が必要となった際は、まずは保証が適用されるかどうかを確認しておきましょう。
なお、中古車では、購入後すぐに不具合が生じた場合、保証の有無に関係なく整備不良として無料交換してもらえることもあるので、購入した業者に確認してみましょう。
ヘッドライトのバルブだけならセルフ交換も可能!
ヘッドライト本体ではなく、バルブ、いわゆる電球だけを交換したい場合は、ハロゲンランプであれば自身で行うことができます。バルブ交換の手順について確認しておきましょう。
〈ヘッドライトの球を自分で交換する手順〉
- ボンネットを開け、ヘッドライトの後ろにあるヘッドライトコードを確認する
- ヘッドライトコード先端のコネクターを取り外す
- バルブの位置を確認する
- バルブ裏のゴムカバーを取り外す
- バルブを固定しているストッパーを取り外す
- バルブ本体を外す
- ガラス管に触れないよう、新しいバルブを取り付ける
- ストッパーを取り付けて固定する
- バルブ裏のゴムカバーを取り付ける
- コネクターを取り付け、ライトが点灯することを確認する
セルフ交換時の注意点
ヘッドライトの交換作業自体はそれほど難しいものではありませんが、いくつか注意点もあります。
エンジンを切り、時間を置いてから作業する
ヘッドライトの使用後は、バルブが熱を持っています。特にハロゲンやHIDの場合は高温になっているため、使用後すぐに作業するとやけどする危険があります。
また、車の走行直後はエンジンルームもかなり熱くなっているので、ヘッドライトの交換はエンジンを切り、ある程度の時間を置いてから行いましょう。
バルブをさわるときは手袋をする
バルブは、素手でさわらないようにします。ハロゲンやHIDといった点灯時に熱を持つタイプのバルブの場合、手の皮脂がバルブ表面に付着してその部分が高温になり、バルブが割れたり球切れしたりする原因になるからです。
LEDはハロゲンやHIDほど高温にはならないのでそれほど神経質になる必要はありませんが、汚れや皮脂の付着防止、作業時の安全確保の観点からも手袋を装着して作業しましょう。
交換するバルブは車検対応のものを選ぶ
ヘッドライトのバルブは、カー用品店やインターネットで入手できます。さまざまなタイプが販売されており、車種によって適合バルブが異なるので、自分の車に合ったものを選ぶ必要があります。車の取扱説明書には交換できる部位のライトのバルブ形状が記載されているので、確認しておきましょう。
また、販売されている交換用バルブの中には車検に対応していないものもあります。ヘッドライトは重要保安部品であり、車検では色や明るさ、取付位置などが細かく規定されています。不安があればカー用品店のスタッフなどに相談して選ぶことをおすすめします。
なお、ヘッドライト本体の交換はバンパーを外すケースが多く、かなり大掛かりな作業となるため、業者に依頼したほうが安心です。
ヘッドライトは、片側だけが点灯しなくなった場合でも両方交換するのが基本です。もう一方も寿命が近付いていることに加え、同じライトであっても長年使用したものと新しいものでは明るさに差が出ることがあるからです。
ヘッドライトユニットごと交換する際にはエーミングが必要
バルブだけではなく、ヘッドライトユニット全体を交換する場合はバンパーやフロントグリルの脱着が必要なケースがほとんどです。衝突被害軽減ブレーキなどの先進安全技術を搭載している車の場合、フロントグリルやバンパーの脱着を伴う作業にはエーミングが必要なので、DIYはできません。
エーミングとは
エーミングとは、衝突被害軽減ブレーキやペダル踏み間違い急発進抑制装置などの電子制御層が正しく作動するように校正・調整する作業を指します。
こうした先進安全技術を搭載した車にはバンパーやフロントグリルにセンサーが装着されていることが多く、脱着によってセンサー類の軸ずれが起こり、そのままでは正常に作動しなくなる可能性があります。そのためエーミング作業を行い、各機能が必要なタイミングで正しく作動するように調整する必要があるのです。
エーミングしないとどうなる?
エーミングをしない場合、衝突被害軽減ブレーキなどの先進安全技術が正しく作動せず、本来であれば回避できるはずの事故を防ぎきれない可能性があります。
また、電子制御装置の故障を判定する「OBD検査」が2021年10月から車検時に試験導入されており、2024年10月からは国産車において本格導入が始まります。OBD検査ではエーミング実施の有無が判定され、本格導入後はエーミング未実施の場合は車検に通りません。
なお、OBD検査の対象となるのは、国産車では2021年10月1日以降、輸入車では2022年10月1日以降の新型車です。
エーミングは専門の資格を有した作業員しか実施できないことに加え、専門の工具、多数の条件を満たした広い作業スペースが求められるため、どこでも受けられるわけではありません。ある程度の規模の整備工場やディーラーへの依頼が基本となるでしょう。
ヘッドライト交換の前に確認しておきたい球切れ以外の原因と対処法
ヘッドライトのバルブ交換を検討するきっかけは、ヘッドライトをつけても暗かったり、明かりがつかなくなったりすることが多いですが、同じ症状でもバルブ以外に原因がある場合があります。起こりやすい原因と対処法を、バルブを交換する前に確認しておきましょう。
ヘッドライトが両方つかなくなったときはヒューズが原因の可能性も
ヘッドライトがつかなくなるおもな原因は球切れですが、左右両方のヘッドライトが点灯しなくなった場合には、電装部品を過電流から保護するヒューズという部品が原因の可能性があります。
ヒューズの状態を調べるには、ヒューズボックスの中の銅線を確認します。銅線が切れている場合はヒューズの交換が必要です。ヒューズボックスの位置は車によって異なりますが、ダッシュボードの裏やエンジンルームにあるケースが大半です。事前に取扱説明書を読んで場所を確認しておくとスムーズです。
ただし、断線の原因が経年劣化ではない場合、交換してもまた切れてしまう可能性が高いので、原因を突き止める必要があります。自身での確認や判断が難しいときは、近くのディーラーや整備工場で車をみてもらうのがおすすめです。
光量の減少はヘッドライトの黄ばみが原因の場合も
HIDやLEDなど明るいライトを使用しても十分な明るさが得られないときは、ヘッドライトカバーの黄ばみが原因かもしれません。
ヘッドライトは、紫外線を浴びたり細かな傷がついたりすると黄ばみが目立つようになります。黄ばみがあると光量が下がるほか、放置するとヘッドライトの表面がひび割れて、最悪の場合はヘッドライトの本体ごと交換しなければならなくなります。
ヘッドライト本体の交換は大きな出費となるため、ヘッドライトの黄ばみが目立ってきたときの対処法を知り、悪化する前に対処しましょう。以下でヘッドライト表面の黄ばみを取る手順を解説します。
〈ヘッドライトに黄ばみが出てきた場合の対処法〉
- ヘッドライト表面の汚れやほこりを水で流す
- マスキングテープでヘッドライトの周りを保護する
- 耐水ペーパーに水分を含ませてヘッドライトの表面を磨く。
このとき、耐水ペーパーは目が粗いものから細かいものに段階的に変えていく - コンパウンドを使って研磨する
ヘッドライトに泥や砂、ほこりなどが付いている状態で磨くとさらに表面を傷つけてしまうおそれがあるため、必ず最初に水洗いをしましょう。なお、ヘッドライトの内側の黄ばみが気になる場合には、ヘッドライトカバーを外してから内側をコンパウンドで磨く必要があります。ヘッドライトカバーの取り外しや取り付けに自信がない方は、業者に依頼した方ほうが安心です。
ヘッドライトカバーに黄ばみや曇りがあると、光量不足で車検に通らない可能性があります。こまめに洗車をするだけでもある程度防止することができるので、定期的な洗車を心掛けましょう。
ヘッドライトが故障したまま車を運転するのは違反!
ヘッドライトが故障したまま運転することは、道路交通法第62条により禁止されており、7,000円の罰金と違反点数1点の減点が科せられます。ヘッドライトが故障したら、安全のためにもすみやかに交換しなければなりません。
ヘッドライトの故障に気づかず運転を続けてしまう事態を避けるためにも、日頃からヘッドライトが点灯するか、十分な明るさを保っているかなどのチェックを行うとともに、球切れを起こす前にバルブ交換をしておきましょう。
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ヘッドライトの交換についてよくある質問
ヘッドライトの交換に関連してよくある質問とその回答をまとめました。
ヘッドライトの交換費用はどのくらい?
ヘッドライトのバルブ交換だけであれば、2,000円程度~5,000円程度で交換できます。ユニット全体の交換となれば費用相場はより高くなり、ハロゲンやHIDで数万円程度、LEDの場合は10万円以上かかることもあります。
ヘッドライトは自分で交換できる?
ヘッドライトのバルブ交換であれば、自分で交換することも可能です。バルブはカー用品店やインターネットで入手可能ですが、自身の車に適合したバルブを選ばなければなりません。中には車検に対応していないものもあるので、よく確認して選びましょう。
ガソリンスタンドでヘッドライトの交換は可能?
ヘッドライトのバルブ交換であれば、多くのガソリンスタンドで対応可能です。ただし、ヘッドライトユニットごとの交換は対応できる店舗とできない店舗があるので、事前に対応可能か確認しておくことをおすすめします。
ヘッドライトが点灯しない・割れていると車検は通らない?
ヘッドライトは重要保安部品であり、車検時にチェックされる保安基準に規定があります。そのためヘッドライトが点灯しない場合はもちろんのこと、ヘッドライトカバーが割れていたり亀裂が入っていたりする場合も車検不合格になります。
ヘッドライトの寿命はどのくらい?
ヘッドライトの寿命は、種類によって異なります。最も寿命が短いのがハロゲンで2~3年程度、次がHIDで5年程度です。LEDは12~15年程度と最も寿命が長く、車の寿命まで交換の必要がないケースもあります。
※この記事は2024年1月5日時点の情報で制作しています