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七十二候「麦秋至」。夜空に輝く麦の穂「スピカ」を眺めてみよう


暦の上では二十四節気の「立夏」を過ぎ、「小満」を迎えました。本格的な夏に向けて大地も熱を帯び、生命が健やかに成長する季節がやってきました。季語では、麦の穂が実る「麦秋」の時期。夜空では春の星座が西に傾き、見頃を終える頃です。そのひとつ「おとめ座」には、「麦の穂」を意味する星があることをご存知でしょうか。
今回は、「二十四節気」の季節をより細やかにあらわした「七十二候」と、5月下旬から6月にかけて注目したい星空情報をご紹介します。


5日間に凝縮!折々の自然の営みを映し出す「七十二候」

1年の季節の移り変わりを表す「二十四節気(にじゅうしせっき)」は、黄道上の太陽の動きを15度ごとに24等分して決められています。

二十四節気のなかでも、夏至・冬至、春分・秋分は「二至二分(にしにぶん)」、立春・立夏・立秋・立冬は「四立(しりゅう)」と呼び、季節の節目として古来重視されてきました。

二十四節気をさらに約5日ごとの3つの期間(初候・次候・末候)に分けたのが「七十二候(しちじゅうにこう)」で、その時期の「気候」を表しています。より細やかな自然の変化や動植物の様子を伝えてくれるのが七十二候なのです。


二十四節気「小満」は、万物のエネルギーが満ちる時

太陽黄経が0度となる「春分」を起点にして、5月6日に暦の上で夏に入る「立夏」となりました。太陽黄経が60度となる21日には、万物が天地に満ちていく時期「小満」を迎えました。太陽の光を浴びて、あらゆる生命が健やかに成長する季節の到来です。

【小満の期間の七十二候】
◆初候(5月21日~5月25日)
「蚕起食桑(かいこおきてくわをはむ)」
蚕が桑の葉を食べて成長する頃。人々の暮らしを支える生き物として、蚕は大切にされていました。

◆次候(5月26日~5月31日)
「紅花栄(べにばなさかう)」
紅花が咲く頃。花から作られる染料の紅は、高価で大変貴重なものでした。

◆末候(6月1日~6月5日)
「麦秋至(むぎのときいたる)」
初冬に蒔いた麦が、金色の穂をつける頃。麦にとっての収穫の「秋」。「麦秋(ばくしゅう)」は、初夏の季語になっています。

※日付は2023年の場合


おとめ座の左手に輝く「麦の穂」スピカ。月との共演を楽しもう

春から初夏にかけてが見頃の「おとめ座」は、右手に植物の葉、左手に麦の穂を持つ女性の姿が描かれています。一説には、ギリシア神話の農業の女神デメテルと言われ、左手に輝く1等星スピカには「麦の穂先」という意味があると伝えられています。


5月23日から25日にかけて、日の入り後の西の空で金星と火星に細い月が接近し、美しい眺めとなります。25日には月・火星・金星が一列に並び、印象的な光景になるでしょう。

その後、月は姿を変えながら夜空を巡り、31日の夕方から6月1日未明にかけてスピカに接近します。背景には、スピカと「しし座」の2等星デネボラ、オレンジ色に輝く1等星アークトゥルスを結ぶ「春の大三角」が広がります。春の星座が見頃を終える「麦秋」の頃、夜空に青白く輝くスピカを眺めてみてはいかがでしょうか。

6月になると日没後の闇に包まれる頃には、春の星座は次第に西の方に傾きます。入れ替わるように、東の空から夏の星座が姿をあらわし、季節の移り変わりを告げます。

・参考文献
『アストロガイド 星空年鑑 2023』 アストロアーツ

・参考サイト
国立天文台「東京の星空・カレンダー・惑星(2023年5月)」
国立天文台「暦Wiki 七十二候」

画像:国立天文台

画像:国立天文台

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