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紅葉は美しい、でも落ち葉は嫌?ではもし落ち葉がなくなってしまったら?


高地や寒冷地では紅葉のシーズンがはじまり、平地でもカツラやハナミズキ、サクラなどの樹種は早くも色づきが進んできています。紅葉を愛でつつも、公園や街路樹、庭木などの落葉は住民トラブルやクレームの定番の一つです。そもそもなぜ樹木は落葉するのでしょうか。そのメカニズムと起源、そして落ち葉の効能について考えてみます。

落ち葉は土壌の乾燥を防ぎ、雑草の繁茂を抑止し、大量の土壌炭素を固定させます

落ち葉は土壌の乾燥を防ぎ、雑草の繁茂を抑止し、大量の土壌炭素を固定させます


秋だけではない。多様性豊かな落葉バラエティ

ご承知の通り、樹木には落葉樹と常緑樹があり、秋から初冬に美しい紅葉/黄葉を見せるのは、いわゆる落葉樹になります。しかし、常緑樹といわれる樹木も落葉しないわけではありません。森林だけではなく公園などの街中にも普通に見られるスダジイやクロバイ、クスノキなどは、初夏に花をつけるタイミングで、古い葉のおよそ8割を振るい落とし、新しい葉に入れ替え、このため「常盤木落葉(ときわぎおちば)」は初夏の季語になっています。
タブノキ、シロダモは2~3年かけて葉を入れ替えますが、6割以上は当年生えた若い葉ですし、かたやアカガシは律儀に1/3ずつ、一年目二年目三年目の葉が同居します。熱帯や亜熱帯の常緑樹には3か月で葉を新しく入れ替える種もあるかと思えば、ヤブニッケイのように葉の寿命が7~8年と長い種もあります。スギやヒノキ、アカマツなどは、主に晩秋から初冬にかけて多くの古い葉を落とします。また、竹もタケノコが育つ季節にあわせて、前年までの葉を落とすので、初夏は「竹秋」と言われます。
こうして見ますと、落葉はほぼ一年中生じていることになり、樹木が多ければ落ち葉掻きは一年中欠かせないことになります。庭木が出す落ち葉を掃いても掃いても落ちてきてうんざりしたり、それが隣家や公園からのものとなるとイライラすることも。落葉を「被害」として起こされた裁判例すらあるのです。最近では、落ち葉クレームがあることから、公園樹や街路樹が、棒切れのように強剪定されることもざらにあります。

秋だけではなく、あらゆる時期に落葉は発生しています

秋だけではなく、あらゆる時期に落葉は発生しています


どうして落葉するの?「葉」が抱えるジレンマとは

葉とは、光合成のために組成された植物の一器官です。そして光合成(photosynthesis)とは、葉緑体を細胞に持つ生物(植物・藻類・シアノバクテリアなど)が、太陽光などの光エネルギーを吸収して、二酸化炭素から自身の体組織となる炭水化物を合成する反応プロセス、またはその能力のことです。
葉は光を効率よく受け取るために扁平水平に広がり、二酸化炭素を吸収、根から吸い上げた水と反応させて、不要となった酸素を排出します。葉に開いた気孔から葉内に取り込まれた二酸化炭素は細胞を満たす水の中に溶け込んで、炭素を固定し保存するための特別な酵素・リブロース-1,5-ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ (ribulose-1,5-bisphosphate carboxylase/oxygenase)、略称ルビスコ(rubisco)がある葉緑体の中に入り、炭素は植物体に同化されます。
植物は二酸化炭素を水溶液としてしか吸収できないため、葉には樹幹から大量の水が送り込まれて常に湿っています。けれども光を大量に受け取るために、葉は外気に広い面積をさらしていて、水分を大量に蒸散させてしまいます。太陽光と二酸化炭素を受け取るという目的のために、葉は植物の「血」ともいえる貴重な水を蒸発蒸散させるジレンマを持つ器官なのです。
このため、温帯から亜寒帯を中心に分布する落葉樹は、太陽光が弱まって光合成の効率が低くなる冬季には、成長を取りやめて葉を切り離し、休眠状態に入る選択をしました。こうすることで貴重な水分の蒸散を防ぐわけです。また、葉を落とすことで樹体全体の表面積を減らし、呼吸量を抑えて消耗を防ぐ意味もあります。
しかしこの説は、ユーラシア大陸や北米大陸の北部の亜寒帯に広く分布する森林域(タイガ)の主要樹種であるモミ類やトウヒ類が、冬も緑の葉をつけたままの常緑針葉樹であることの説明がつきません。
実は近年、針葉樹には広葉樹とは構造の異なる光合成の仕組みがあることが判明してきています。特に副次発生するアンモニアを同化してグルタミンを生成する過程が針葉樹では欠如しているなど、不明な部分が多いのですが、針葉樹は気孔が表皮から陥没した内側にあることで気孔内の気流を抑えていることと、クチクラ層で葉の表面を覆うことで、水分の蒸散を防ぐことができることはわかっており、これらの性質によって冬季の僅かな太陽光でも、葉をつけて光合成を持続させることが生存に有利となっていると考えられます。

植物が葉の光合成によって吸収する二酸化炭素は膨大

植物が葉の光合成によって吸収する二酸化炭素は膨大


二酸化炭素増大の原因は化石燃料ではない?リターフォールの膨大な炭素蓄積

近年、世界規模で問題となっているのがいわゆる「温室効果ガス」の増加による気候・気象変動の懸念です。
地球の大気の成分は、窒素が78%、酸素が21%、アルゴンが0.9%を占めていて、残りの0.1%の微量気体に、フロンなどの人工生成気体やメタン、一酸化二窒素などの大気汚染物質、そして二酸化炭素があります。このわずかな量の二酸化炭素を利用して生存してきたのが植物などの光合成生物たちです。
人類が生産・消費活動で使用する化石燃料の燃焼はもちろん、自然現象として起きる火山噴火や山火事による大気への二酸化炭素の解放は、速やかに再び固体化されて還元されなければなりませんし、それを行っているのが植物です。
植物も呼吸では酸素を吸い込み二酸化炭素を排出しています。また、遺体は他の生物たちにより食べられて消化され、その際に二酸化炭素を発生させます。その収支が植物の実質酸素排出量になります。このため「植物を増やしても二酸化炭素抑止にはならない」という主張がよく見られます。けれども、もし植物の光合成による酸素の排出と、呼吸や分解(落葉・落枝・死滅による腐敗)によって生じる二酸化炭素が同じ量、もしくは二酸化炭素が上回るというのであれば、生物に満ち溢れる地球上では酸素がどんどん減っていき、二酸化炭素に置き換わってしまうでしょう。地球上の全酸素が入れ替わるのは2,200年ほどとされていますから、人類が生まれるよりはるか前に、地球から酸素がなくなっていたはずです。そうなっていないのは、光合成による酸素の生産が、二酸化炭素の排出を上回っていたからという当然の理屈になります。
大気への酸素の供給、すなわち陸上の植物の基礎生産量は年間で540億tほどになります。加えて海洋の植物プランクトンによる酸素生産が500億t。一方、二酸化炭素は人間の経済活動によって生じる量が335億tと言われていて(2021年版 EDMC/エネルギー・経済統計要覧)、これに生物の呼吸による排出や、火山活動などの排出が加わります。
二酸化炭素は世界の気候変動のもっとも大きな要因とされ、2020年には工業文明が本格化する西暦1750年以前の149%、つまり、この270年ほどの間に1.5倍に増えているという計算になります。二酸化炭素の大気中での総量はわずかなのですが、大気中の二酸化炭素が増え続けていることは間違いないことです。
ですが、その本当の理由は、実は化石燃料燃焼による排出ではないのです。
世界の森林面積は約40億ヘクタールですが、年平均で520万ヘクタールの森林が、人間の開発行為によって消失しています。仮に地上の酸素生産量=森林の酸素生産量としますと、毎年その機能の約1/80が毎年失われているのですから、およそ7億tの酸素生産が失われていることになります。
森林(樹木)が失われることは、それだけ炭素固定が少なくなることを意味します。地球全体で植物が蓄積貯蔵している炭素量は4千660億tとされていますから、その1/80が失われていると考えると、空恐ろしい数字になります。
植物は、生きている限り成長しながら大量の葉や花、枝を落とし、それらは土壌に吸収されます。微生物や虫などによりそれらは消化されて、その過程で二酸化炭素を排出しますが、消化されずに残る落葉落枝=リターの量は膨大です。日本の森林の1年間のリターフォール量は落葉広葉樹林で1ヘクタールあたり4t、照葉樹林では6.5tになります。 こうしてリターと遺体によって植物が土壌に蓄積させた炭素量は、地球全体で2兆110億tにもなるのです。
つまり、これらの数値からわかるのは、大気中の二酸化炭素増加の一番の要因は、植物の減少によるものだということです。
気候変動の主因とされる化石燃料を使わないことよりも、「樹木を伐採する」ことのほうが、地球環境にとってリスク・デメリットであるといえるのではないでしょうか。

道やベランダなどあらゆる場所に入り込む落ち葉は迷惑がられがちですが…

道やベランダなどあらゆる場所に入り込む落ち葉は迷惑がられがちですが…


さまざまな効用のある街路樹・公園樹をいつくしみたい

植物の営為は偉大の一言に尽きます。しかし彼らは動けないので、人間が根こそぎ伐採するとなったらまったくの無力です。叫ばれている地球環境の危機に対して私たちにできることは、少なくとも身近な環境にある落ち葉を迷惑がったりまとめて燃やすことではなく、それらを土に返すことではないでしょうか。
二酸化炭素が増えれば、植物の光合成は盛んになります。つまりより繁茂し、より多くの酸素を供給し、より多くの炭素を蓄積することになるわけです。二酸化炭素が増えているにもかかわらず森林が減っているのは自然現象としては矛盾していて、言うまでもなくこれは人為的開発行為が原因です。
イチョウやスダジイ、コジイ、ケヤキやエノキが私たちの身近にあるのも、それらの樹木に優れた防火、耐震機能があり、先人たちが積極的に保護し、また移植してきた歴史があるからです。1995年に発生した阪神・淡路大震災でも、街路樹や公園樹が火災の延焼や家屋の倒壊を防ぎ、緩和させた事例が数多く見られたということです。大災害に直面した人が大樹に避難することで安心感を得たり、東日本大震災での震災遺構となった「奇跡の一本松」など、樹木がもたらす精神面での人への貢献も計り知れないものがあります。本来裸出した土に枝葉を落とし、それらを滋養とする生物たちと共生してきた樹木が、アスファルトや石畳に植えられているだけでも涙ぐましいのに、落ち葉がうっとうしい、樹冠に鳥が集まる、虫が増えるからと強剪定されているのを見るととても悲しい気持ちになります。
よく動物への虐待は問題になりますが、私たちは身近な街路樹、公園樹たちの扱いに対しても、もう少し目を向けるべきではないでしょうか。

(参考・参照)
植物の世界 朝日新聞社
環境省_自然環境局【森林対策】-世界の森林の現状
温室効果ガス、大気中濃度が過去最高に 国連
日本地球化学会
気象庁 | 二酸化炭素濃度の経年変化

街路樹の強剪定は近年頻繁に見られますが、樹木を弱らせます

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