月の満ち欠けは季節の移り変わりをあらわし、古の人々の農作業や狩猟の目安となっていました。毎月の満月をあらわす名前や、「スーパームーン」「ブルームーン」といった、月の見え方や現象をあらわす呼び名もありますね。
今回は、満月の呼び名と、注目したい月に関連する天文イベントについてご紹介します。
満月の名前から伝わる、季節の移り変わりと生活の営み
4月27日の満月は「ピンクムーン」。春にぴったりの呼び名ですが、ピンク色の月が見られる、というわけではありません。由来は、月の満ち欠けとともに生活していたネイティブアメリカンが、毎月の満月に付けていた名前です。ここ数年、日本でもこの呼び名が知られるようになりましたね。農作業や狩猟の時期と結びついた満月の名前は、人々の生活の営みや自然への眼差しを感じさせてくれます。
◆1月:ウルフムーン
真冬の飢えた狼の遠吠えにちなんだ名前。他には、オールドムーンという呼称も。
◆2月:スノームーン
雪の季節をあらわす名前。雪に閉ざされ食糧が不足することからハンガームーン(飢餓月)とも呼ばれます。
◆3月:ワームムーン
春が始まる3月。地面から虫が這い出してくる時期。二十四節気の「啓蟄(けいちつ)」と通じる季節感ですね。別名はサップムーン。サップとは樹液のことで、メープルシロップのためのカエデの樹液を採取する時期をあらわしています。
◆4月:ピンクムーン
春に咲くピンク色の「フロックス」という花に由来します。
◆5月:フラワームーン
本格的な花の季節が到来。ネイティブアメリカンだけではなく、多くの国でフラワームーンと呼ばれています。
◆6月:ストロベリームーン
野いちごの収穫の季節。
◆7月:バックムーン
バックとは、雄鹿のこと。鹿の角が生え変わる時期。
◆8月:スタージャンムーン
スタージャンはチョウザメのこと。豊漁への願いを込めて。
◆9月:コーンムーン
とうもろこしをはじめ収穫の時期。ハーベストムーンとも。
◆10月:ハンターズムーン
鹿やキツネを狩る月。別名は、引き続き収穫月であることからハーベストムーン。
◆11月:ビーバームーン
ビーバーを捕獲する罠を仕掛ける時期。
◆12月:コールドムーン
冬が訪れ、寒さが本格的になる季節。
「とてもめずらしい月」という意味の「ブルームーン」。次回は2年後
「ピンクムーン」と関連がありそうに思える「ブルームーン」ですが、こちらは「同じ月に2回の満月がある時の2回目の満月」の呼び名です。本来は「ひとつの季節の間に4回満月があるときの3回目の満月」を指す言葉とされていますが、今では「同じ月の2回目の満月」を指すことが一般的になりました。
「once in a blue moon」 (めったにない)という英語の言い回しから、ブルームーンは「とてもめずらしい月」という意味になります。満月がブルームーンとなるのは19年に7回ほど。2〜3年一度しか見られない、希少な満月といえますね。
残念ながら、2021年は同じ月に満月が2回ある月はありませんので、ブルームーンも見ることはできません。次回のブルームーンは2023年8月31日です。楽しみに待つことにしましょう。
全国で観測できる!5月26日は「スーパームーン」で皆既月食
地球を回る月の軌道は楕円形のため、軌道上のどこで満月になるかによって、満月の大きさが変わります。1年のうちで地球の中心と月の中心が最も近い満月は「スーパームーン」、逆に最も遠い満月は「ミニマムムーン」と呼ばれています。スーパームーンとミニマムムーンの大きさの違いは直径約1.14倍、明るさは1.3倍ほどの差があります。
2021年のスーパームーンは5月26日。この日の満月は皆既月食が同時に起こる、天文ファンの間で今年最も注目されているイベントです。
皆既食の始まりは20時11分頃(東京での時刻)と、観測にも絶好の時間帯。次第に月全体が赤みを帯び、神秘的な満月が夜空に浮かびます。皆既食は約15分間と短い時間で終了します。スーパームーンでの皆既月食という貴重な機会を、ぜひ楽しみたいですね。
一方、「ミニマムムーン」は12月19日。2021年最後の満月は、1年でいちばん小さい満月で締めくくりとなります。
参考文献
『アストロガイド 星空年鑑 2021』 アストロアーツ