ニ十四節気七十二侯では、啓蟄の桃始笑(ももはじめてさく)を終え、いよいよ春分を迎えようとしています。上の花、桃かしら?と思われた方もいらしたのでは?
こちらの花は、漢方やスイーツで馴染み深い「杏(あんず)」の花です。杏といえばアプリコット。シャンプー等にも使われ、よい香りを想像しますが、花の段階ではまだうっすらとした香りです。中国原産のバラ科サクラ属の落葉小高木で、日本へは平安時代に渡来し、もっぱら薬用として栽培されてきました。実が熟すのは6月ごろ。風通しの良い日陰で乾燥すると、果肉と核が離れやすくなり、核を割って種子を収穫します。この種子が「杏仁」です。
今回は、花も実も種も楽しめるこの「杏(あんず)」について見ていきましょう。
違いを知ると楽しみや味わい倍増!!桜・梅・桃・杏の見分け方は?
【花の特徴】
桜の葉柄は長いため、枝からこぼれるように咲いているものが「桜」で、一目瞭然です。
枝にくっついているように咲くものは「梅」か「桃」か「杏」となります。「桜」は花びらの形も切れ込みがありハート形で、「桃」はやや花びらがとがっており、「梅」「杏」は花びらが丸いです。
「桃」は葉が長く、花と同時に葉が多く見られます。
またよく見ると、「桃」は同じ場所から二個の花芽が出るのに対して、「梅」「杏」は一つずつの花芽。つまり「梅」と「杏」だけが見分けがつきにくいのです…。
「杏」は萼(がく)片がそり返るものが多いので、そこでおそらく判別がつきますが、それでも迷ったら、枝の色を見ても良いかもしれません。
【幹や枝の特徴】
「杏」は赤みを帯びた褐色で、縦に割れ目、新枝は紫褐色で無毛、少し光沢があります。
「梅」は暗灰色で不ぞろいな割れ目、新枝は緑色で無毛、わずかに毛があることもあります。
見分けられそうでしょうか?
杏(あんず)、アプリコットを使ったお菓子たち
【杏仁豆腐】
中華料理のデザートとしてよく知られている杏仁豆腐。種子の茶色い薄皮を取り除いた白い種肉の部分「杏仁霜」を寒天で固めたもの。舌触りもなめらかで、口中によい香りが広がります。
【杏ジャム=アプリコットジャムを使ったお菓子】
酸味と甘みのバランスのよい“杏”を使ったジャムはスイーツの名脇役にも主役にも万能です!
意外とたくさんのものに使われているのをご存知でしたか?
・チーズケーキやパイの照りに
・ザッハトルテの風味に
・お花のようなジャムのクッキーに
・スコーンやクレープ、ヨーグルトに添えて
・フリュイ(果物をつかったゼリー)に
杏のコンポートや杏のドライフルーツもよいですね。
詳しいレシピはこちら
参照:杏のレシピ(キナリノ)
杏の産地は?
産地は青森県、長野県が有名です。特に長野県「あんずの里」では、なだらかな傾斜地に杏畑が広がり、ひと目で多くの花が見渡せる「一目(ひとめ)十万本」が圧巻です。杏の花の見ごろは通年は4月からですが、今年は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、外出自粛のところもありますね。
映画「博士の愛した数式」では、ロケ地の「あんずの里」の一面杏の花のシーンを鑑賞することもできます。いつか訪れるために、映画を見ておくのもよいかもしれませんね!
※外出の際は、手洗い、咳エチケット等の感染対策や、『3つの密』の回避を心掛けましょう。
※新型コロナウイルス感染拡大の影響で外出の自粛を呼び掛けている自治体がある場合は、各自治体の指示に従いましょう。
杏以外にも、こぶしやモクレンなど春の訪れを感じさせる花木が咲き始めました。
少し目線を上に向け、空と花の色のコントラストを楽しむのも素敵ですね。年度末、次の準備期間、気持ちもそわそわとお忙しいことと思いますが、自分のペースを大切にお過ごしください。