9月も下旬も迎え、秋刀魚、さつまいも、梨やぶどうなど、旬の食材が数多く出回っていますね。秋の味覚のなかでも特別な存在といえるのが「栗」。この季節になると、栗を使った料理やスイーツを目にすると素通りできない栗好きも多いのではないでしょうか。
今回は、世界で栽培されている4大栗と、あまり知られていない日本の栗の品種についてご紹介します。
日本と世界の栗。それぞれの特徴は?
世界には多くの種類の栗がありますが、果樹として栽培されているのは、主に日本栗(和栗)、西洋栗、中国栗、アメリカ栗の4種類になります。
和栗と呼ばれる日本栗は、大粒で甘さが控えめ、ホクホクとした素朴な味わいが特徴です。イタリアやフランス、スペインなどで生産されている西洋栗は、やや小ぶりで果肉がしまっており、力強い風味があります。渋皮がむきやすいという特徴も。天津甘栗でおなじみの中国栗は、西洋栗と同様に渋皮がむきやすく、果肉がしまっていて甘みが強い品種。アメリカ栗は、100年ほど前に発生した「胴枯病」で激減し、今ではほとんど出回ることのない幻の品種となっています。
このところ、「和栗」「イタリア栗」「フランス栗」など、それぞれの味わいの違いに注目した商品もみられますね。また、ひとくちに和栗といっても、多くの品種があることをご存知でしょうか。
最旬は9月下旬!栗が美味しい季節の到来
梨やぶどう、りんごなどのように、栗にも品種があります。他の作物と同様に、早生(わせ、そうせい)、中生(なかて、ちゅうせい)、晩生(おくて、ばんせい)に分類され、品種によって収穫される時期が異なります。日本では、8月下旬より全国のトップをきって熊本県で収穫がはじまります。
早生(8月下旬~9月中旬頃)の代表的な品種は「丹沢」。早生種としては甘味があり、栗ごはんにぴったりです。次に収穫期を迎えるのが、大粒でツヤのある「国見」。甘味が少なめなので、甘露煮や炊き合わせなどに適しています。渋皮がむきやすい「ぽろたん」も、この頃に出回ります。鬼皮に切れ目を入れて加熱すると、渋皮も一緒にきれいにむける画期的な新品種です。大きめで黄味を帯びていて、香りがよく甘味もあります。
中生(9月下旬〜10月中旬頃)には、熊本県、茨城県をはじめとして、全国で最も多く栽培されている「筑波」が収穫期を迎えます。淡い黄色の果肉で、甘味が強くホクホク、香りも良好と三拍子揃った品種です。成熟期は9月下旬で、まさに今が旬。
同じ頃に出回るのが栗の王様ともいわれる「利平」。中国栗と和栗を掛け合わせた品種で、大粒で甘味が強いのが特徴です。煮崩れしやすいので、茹で栗や蒸し栗にしてそのまま味わいましょう。「銀寄(ぎんよせ)」は、歴史ある丹波栗の代表的な品種。大粒でかたちが良く、甘味、香りが楽しめます。和菓子にも使われる高級栗です。
最後を飾る晩生(10月上旬~下旬頃)にも美味しい栗が出回ります。栽培のしやすさ、かたちの良さが特徴の「石鎚(いしづち)」は、やや大粒で甘味があり、香りも良好で煮崩れしにくい品種。「岸根(がんね)」は、大粒な栗の代表格。ホクホクで甘みが強いのが特徴。生産量が少なく希少価値の高い栗です。
旬を迎えた和栗は、品種によって特徴が異なり、かたちや味わいもさまざま。渋皮をむきやすい新品種の「ぽろたん」は、ぜひ試してみたいですね。
昔は非常食だった。滋養豊富な栗の食べ方
栗は風味の良さだけではなく、昔から「栗の能、腎補うて気をば増し、胃腸腰脚(ようきゃく)骨を強うす」といわれ、滋養豊富な食材として知られていました。日本では縄文時代には主食として用いられ、農耕が行われるようになってからも、飢饉に備えた非常食として栽培されていたといわれています。
栄養面では、ビタミンB1、B2、ビタミンC、カリウムなどが充実。たんぱく質も含まれ、食物繊維が豊富です。栗に含有するビタミンCは、でんぷん質に守られているため、加熱しても失われにくい特徴があります。
渋皮にはポリフェノールの一種、タンニンが含まれるので、渋皮を付けたまま調理するのも良いですね。夏の疲れが残りがちな今の時期は、主食に栗の滋養を補う栗ごはんや、うなぎ、鶏肉、里いもとの組み合わせもおすすめです。
一定期間貯蔵して甘みを引き出した「貯蔵栗」も評判を呼んでいますね。貯蔵熟成された栗のシーズンは、10月中旬から12月頃にかけてとなっています。自宅でも、購入した栗を冷蔵庫のチルド室(0度前後)で保存すると甘味が増すそうです。この秋は、品種も意識して、栗の多彩な味わい方を楽しみましょう!
・参考文献
吉田企世子『旬の野菜の栄養辞典 最新版』エクスナレッジ
・参考サイト
農研機構「栗」
農研機構「ぽろたん」
旬の食材百科
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https://www.ibaraki-shokusai.net/season/season_kasamakuri.php