
うだるような暑さとなった25年6月21日。“ギャルの聖地”渋谷109の店頭イベントスペースには、この日のためだけに自らデザインして作った衣装に身を包み、新曲「ジモンジトウ」を歌う“シンガー・ソングライター”おかゆ(34)がいた。この日、さまざまな思いが交錯し、目を潤ませた。それを紛らわすように明るく努める姿が印象的だった。このミニライブを“第2章の始まり”と位置付け目を潤ませた、その意味に迫った。【川田和博】
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“平成の女流し”の名で親しまれる。25年5月1日、メジャーデビューと同じ日に個人事務所を立ち上げて独立。同6月18日には、独立後初となるCDシングル「ジモンジトウ」を発売した。そして、34歳の誕生日となる同21日。夢だった“ギャルの聖地”で発売記念ミニライブの開催。この日は、全てが重なった日となった。
新曲について、今回はシンガー・ソングライターにこだわった。
「今までは“女ギター流し”という肩書でやらせてもらっていました。もちろん、やめたわけではないんですけど、“流しだから”ということで、ずっとオリコンランキングが演歌・歌謡曲ジャンルになるというか、やっぱり分けられちゃうんです」
「もっと幅広い層に聞いてほしい」。そこには、歌い手としてごく自然な欲求があった。
「自分の中では女流し出身のシンガー・ソングライターみたいな感じ。いろんな世代の方に歌を届けていきたいので、普遍的なポップスというか、そういうかたちにしたかった」
“流し”の肩書を外すことで変わったのは、楽曲の方向性だった。
「流しで聞いていただける方たちは、どちらかというと演歌・歌謡曲系なんです。スナックでリクエストをもらって、そこで歌う曲の半分以上は演歌・歌謡曲。だから、自分が作って届けていく曲と聞きたい方のニーズにあった曲を作ってとなると、どうしても歌謡曲になってしまいます」
新曲誕生の裏は、まさにタイトル通りだった。
「歌謡曲は今も大好きなんですけど、昨年、流し10周年という自分の中の節目となる目標を達成しました。そして今年5月、独立もさせてもらいました。そんな大きな決断をする時に『曲もどうしていこうか』と自問自答していました」
新曲はある意味、現時点でのおかゆ自身でもある。
「浮かんだコード進行も、全く今までの歌謡曲じゃなくて、ポップスのコード進行でした。ギターで弾いた時にサビが出てきて、それを録音して担当ディレクターさんに聞いてもらったんです。すると『すごくいいと思う。絶対に歌詞を付けてください』と言ってくださった」
タイトルは漢字でなく、片仮名にこだわった。
「作った時に片仮名で浮かんできたんです。それでもう、絶対に片仮名だなって。多分、自分自身すごく自問自答をしていた時期で、そのワードがバーと出てきたと思うんです」
ただ、決してポップスを作ろうと意識したものではないという。
「もう本当に自然と出てきたんです。でも、出来上がって『あれ? 歌謡曲じゃない』と思ってディレクターさんに確認しました。それでも『大丈夫だと思います』と言っていただきました」(つづく)
◆おかゆ 本名、坂本由佳(さかもと・ゆか)1991年(平3)6月21日、北海道生まれ。19年5月1日、「ヨコハマ・ヘンリー」でビクターからメジャーデビュー。23年5月、5枚目シングル「渋谷のマリア」が発売週のオリコン演歌・歌謡曲ウイークリーランキングで1位を獲得。また、第16回CDショップ大賞2024歌謡曲賞を受賞。167センチ。血液型A。