春の旬といえば何が思い浮かびますか?
ぽかぽかの陽気だったり雪が降ったりと温度差のある毎日ですが、こんなときこそ、春の旬の滋養を味方にして、日々の食事を楽しみましょう。この時期は特に、素材そのものに力のある野菜や魚がたくさん出回るので、素材を生かしたシンプルな調理で味わいたいものですね!
出回っている春キャベツは、冬キャベツより水分を多く含み甘みがあるため、サラダや浅漬けに最適。ロールキャベツなどの煮込み料理とはまた違う楽しみ方で、スープやパスタにして柔らかな歯触りを味わうのもよいですね!
また卯月(4月)は、新ごぼう、新玉ねぎ、新じゃがもでてくる季節です。レタス、アスパラ、ニラ、分葱、三つ葉も、旬の今、店頭でよく目にするのでは?
お酒を飲まれる方は、春の旬といえばそら豆を思い浮かべる方も。そら豆の食べごろは3日といわれるくらい鮮度勝負、入手したらさやから出し、さっと塩をきかせて湯がいていただきましょう。さやごと、グリルで焼いて焦げ目がついたものを、割っていただくのもいいですね。
本日は、このほか盛りだくさんの春の旬を見ていきます。
春の山の幸を味わおう!
春は山の幸を味わえる季節です。何が思い浮かびますか?
明日葉、うど、こごみ、ぜんまい、わらび、タラの芽、山芋、ふき、タケノコなど。新しくでてきた芽を頂くわけですから、まさに自然からのエネルギーのおすそ分けですね。
天ぷらは定番ですが、味噌汁、油揚げの炒め煮、白和え(お豆腐の和え物)、ゴマ和え、ピーナッツやクルミなどのナッツ和え、酢味噌和えなども美味しいです。
山菜の苦みやあくの処理は、素材によって異なりますので確認しましょう!本日は、わらびのあく抜きをご紹介します。
【わらびのあく抜き】
草木の灰が手に入るのであれば、失敗がなくおすすめ。春のわらびのために、バーベキュー等の灰を保管する方もいます。
※わらび200gに4~5g程度の灰
1、さっと汚れを流したわらびをバットなど平らな容器に並べ、木灰を一面にまぶします。
2、わらびが被るまで熱湯をかけ、すぐ蓋をして一晩おきます。
3、水洗いし、きれいな水につけて冷蔵庫へ。
4、使う分だけ茹でていただきます(水は毎日替えます)。
灰が手に入らなければ重曹で処理します。重曹の場合、半日したら、水替えをし、2日間黒い灰汁がでなくなるまで替えていきます。
※わらび200gに対して小さじ2杯の重曹
柔らかなわらびは、さっとゆでて割醤油(お出汁とお醤油を半々の割合であわせたもの)と海苔やおかかで頂くのも通の味わいです。
春の海の幸を味わおう!
春の海の幸は何が思い浮かびますか?
シラス、かつお、ホタルイカ、イイダコ、赤貝、あさり、ハマグリ、タイ、キンメダイ、さざえ、サヨリ、サワラなど。そして、生わかめ、生のり、生もずく、昆布、あおさなどの海藻類も美味しい時期です。新芽を味わうという意味で山の幸と同様かもしれません。
今回は、生わかめの下処理についてご紹介します。生わかめは大量に安価で手に入りますが、見た目の色が茶褐色で少しグロテスク。これが新鮮で美しいわかめの深いグリーンとなることはご存知ない方もいらっしゃるかもしれません。塩蔵とはまた一味違う、食感と風味を楽しめます。生わかめの株は、カーブのうねりが美しいメカブ、生わかめの茎が茎わかめ、など丸ごと楽しめるのも醍醐味です!
【生わかめの下処理】
1、ボウルに水をはり、ほこりやごみを水で流しながらよく洗う。
2、葉の部分と茎の部分、めかぶの部分を包丁できり分ける。
3、まず茎を投入。20〜30秒たったら、めかぶ、葉の順に投入。全体の色が美しい緑にさっと変わればよい。茹で過ぎないように。
4、ボウルにあける。 氷水で冷やす。
茹でず、しゃぶしゃぶでいただく方もいます。美しいグリーンに変わる変化を楽しめますね。ただ、氷水で冷やしたほうが、歯ごたえなど食感がよくなります。ポン酢やワサビ醤油でいただく新鮮な生わかめは最高ですよ。
旬じゃないのに、4月3日はインゲン豆の日!?
インゲン豆とは、本来は乾燥したものですが、現在では、インゲン豆を収穫する前のさやの状態で収穫し食せるよう改良したのがさやいんげんです。近年は、このさやいんげんのこともインゲン豆と呼ぶこともあります。
インゲンは、中南米の原産ですが、中国福建省出身の隠元禅師が、禅宗の精進料理(普茶料理)の材料として日本に広めました。実際のインゲンの旬は6~9月。成長が早く、1年に3回収穫できることから「三度豆」とも呼ばれています。傷みやすく乾燥に弱いので、ポリ袋などに入れて野菜室で保存するのがおすすめです。
さて、この隠元禅師は、度重なる日本からの招請に応じて、63歳の御年で20人の弟子を連れ、三大禅宗の一つ、黄檗宗(おうばくしゅう)を広めました。日本でいう「三大禅宗」は臨済宗、曹洞宗、黄檗宗。当初は「臨済宗黄檗派」などと称していましたが、幕府の政策等により、明治9年、一宗として独立し「黄檗宗」を公称するようになりました。
4月3日は、隠元禅師の命日ということで、インゲン豆の日となりました。隠元禅師によって隠元豆(いんげんまめ)以外に伝えられたものは数多く、西瓜(すいか)・蓮根(れんこん)・孟宗竹(たけのこ)・木魚・イス・テーブル・原稿用紙なども禅師の請来によるもので現代の私たちの生活にはかかせないものです。
総本山である京都府宇治市の萬福寺は中国明朝様式を取り入れた伽藍配置の建築で、日本には他例がなく、国の重要文化財に指定されています。訪れる方は、美しい庭園や建築美を堪能できるだけでなく、禅体験や、中国風精進料理である「普茶料理」を味わうこともできます(要予約)。日本の精進料理(禅僧が日常食する質素な食事)とイメージが異なり、美しく盛りつけられる料理の数々は、高タンパク・低カロリーで栄養面にも優れ、席を共にする人たちと楽しく感謝して料理を頂く事に普茶料理の特徴があります。
このような状況の中です。家族と過ごせること、食事ができること、当たり前のことがありがたいことであると感謝しつつ、旬を取り入れた食事や規則正しい生活など最善をつくして健やかに過ごしましょう。
【参考】
毎日のお惣菜シリーズ2「野菜料理Ⅱ」婦人之友社
七十二の季節と旬をたのしむ歳時記「くらしのこよみ」 うつくしいくらしかた研究所