秋といえばおいしい食材がいっぱいありますが、山の幸はもちろん海の幸も見逃せませんね。というのも、秋に旬を迎える代表選手「サケ」は、卵を抱えているうえに脂がのっているため、今が一番おいしい時期といわれます。
川で産まれ、海で成長し、再び生まれた川に戻ってくる……。私たちが日頃、その命をありがたくいただいているサケの、身近でありながらも不思議な生態を今回はご紹介しましょう。
7回もその姿を変化させるサケの七変化
その魚類の中でも不思議な生態のサケ。不思議といわれる理由は、川と海の両方に生息する時期がある珍しい生態にゆえんします。
さらにサケは、なんと7回もその姿を変化させるのです。その七変化とは「卵」→「仔魚」→「幼魚」→「パー」→「スモルト」→「成魚」→「産卵期の成魚」の順となります。
川底に隠されるように産み付けられた卵が孵化して、「パー」という小さな姿になるまでは川で生息します。
そして、若いサケとなる「スモルト」に成長した段階で、ようやく海に出るのです(なかには一生を川や湖で過ごすサケもいます)。
海で数年過ごした後(長いサケだと8年ほど海で過ごすそう)、「成魚」になった段階で産卵のために川を遡上し、生まれ故郷の「川」に戻ります。そして、サケはふるさとで卵を産んで生涯を閉じます。
何より、ほとんどのサケが自分の故郷を間違えずに、ちゃんと「母川回帰」するのですから、本当に不思議ですね。
サケとサーモンは何が違うの?
サケとサーモンの違いについては「色味も同じようだし、呼び名が違うだけ?」と感じている人も多いのではないでしょうか。実は、サケとサーモンは違う魚なのです。
「サケ」
もともとは鱒の一種であり、鱒の種類の中で最も大きい魚が、「鮭」と呼ばれるようになりました。
サケは川で産まれて海で過ごすため「海水魚」に分類されます。
サケは日本産で天然のものが多く、加熱しないと食べることはできません。
「サーモン」
サーモンと呼ばれているものは、正式にはトラウトサーモンのことを指します。寿司店で「さけ」を頼んだときに出てくるのはこのトラウトサーモンになります。
ただし、サーモンはニジマスなどと同じ「淡水魚」に分類されます。
スーパーなどに出まわっているサーモンのほとんどは海外から輸入されたもので、こちらは生でも食すことができます。
サケは意外にも白身魚だった?
サケといえば鮮やかなオレンジがかった色が特徴的ですよね。マグロのような赤身とは違うものの、白身か赤身かと問われれば、「赤身の魚」と答える人多いのではないでしょうか。ですが実は、サケは白身魚なのです! でもなぜ、白身魚なのでしょうか?
もともと魚の赤身と白身の区別は、筋肉の色で分けられます。
サケの筋肉は白なので白身魚に分類されるのですが、ふだんのエサの影響によって、身の色が赤く見えるのです。サケはエビやプランクトンなど甲殻類を食べて成長しますが、それらのサの中に含まれる赤い色素によって赤みを帯びた身の色に……。ちなみにイクラが赤いのも同じ理由です。
── 日本の食卓に欠かせないといっても過言ではないサケ。
私たちにとってとても身近な食べ物だけあり、意外な生態を知ると、ありがたさやおいしさがまた違ってくるのではないでしょうか。サケの生き様や不思議さを感じながら、ぜひ、ありがたくいただきたいものですね。