北海道ではジャガイモや玉ネギの収穫が終わると、9月中旬から秋まき小麦の種まきが始まります。10月からは雪がちらつく日もある北海道ですが、秋にまかれた小麦は、どうやって雪深い冬を過ごすのでしょう。
小麦の種まきは春と秋。北海道では秋まきは9月中旬に
小麦の種まきは春と秋に行われます。春まき小麦は4月~5月に種をまいて8月上旬~中旬に収穫します。主にパン用になりますが、秋まき小麦に比べて栽培される期間が圧倒的に短いので収穫量が少なく、しかも、収穫期の8月は雨の日も多いため、品質が不安定になりやすいといわれています。
一方、秋まき小麦は9月中旬に種をまき、10月上旬に芽が出ます。この新芽は雪の下でジッと冬を越し、翌年の7月下旬~8月上旬に収穫されます。主にうどんなどに使われますが、近年はパン用の品種も登場しています。
秋まき小麦は晩秋に芽を出す。新芽は雪の下でジッと春を待つ
9月中旬に種をまいた小麦は、ほぼ1週間で芽を出すので、10月上旬には小麦の芽がほとんど出そろいます。10月も中旬になると北海道では朝晩の気温がぐんと冷え込み、紅葉が見ごろを迎えます。森が赤や黄色に染まるころに、秋まき小麦の畑では新芽がそろっているので、季節はずれの「若い緑」を見ることができます。
11月になると初雪の便りがきこえる北海道ですが、小麦の新芽は、霜がおりても雪が降っても、畑でじっと「耐えて」います。
冬になると畑には1mを超える雪が積もります。北海道では4~5ヵ月間、大地は雪に覆われます。その間、小麦の新芽は雪の下で、じ~っと雪解けを待ちます。雪の下に埋めて冬を越す越冬野菜が甘くなることからもわかるように、雪の下は雪が外気を遮断するため、地上に比べると温度が下がらず、0℃で維持され、しかもほどよい湿度も保たれます。ゆえに小麦の新芽も越冬できるのでしょう。
そして春。雪が解けると小さな芽はぐんぐんと伸び、7月末ごろに収穫されます。
春まきと秋まきでは小麦の品種が違う
春まき小麦と秋まき小麦では、栽培される品種が違います。
4月に種まきをする春まき小麦は、ハルユタカ、春よ恋、はるきらりなど、全国的に名の知れた品種が栽培されます。特にパン用の強力粉は春まき小麦に限られていましたが、最近は品種改良がなされ、秋まき小麦にもパン用の品種が登場しました。
秋まき小麦にも様々な品種があります。
【ホクシン】…中力
コシが強く、主にうどんに用いられる。パンにすると焼き色が薄い。
【きたほなみ】…中力
ゆでうどんにすると食感が優れ、めんの色がクリーミーホワイトになる。白くきめ細かいのが特徴。お菓子の原料にもなる。
【キタノカオリ】…強力
コシが強く高タンパクでパンに用られる。粉の色が黄色がかっていて、もちもちに仕上がる。
【ゆめちから】…超強力
パンや中華麺用。北海道ではじめての高タンパクで超強力な小麦。パンがもっちりと仕上がる。
〈参考:農林水産省「特集 麦(5)」〉
〈参考:アグリシステム㈱「麦の風工房 北海道産小麦の主な品種」〉
〈参考:JAきたみらい「秋まき小麦の播種作業が行われています」〉
〈参考:JA幕別町「小麦の栽培こよみ」〉
〈参考:北海道 農政部 生産振興局農産振興課「麦ができるまで」〉
※写真はすべてイメージです。
9月になり、北海道では朝晩の気温がぐんと下がってきました。気温の寒暖差が、農作物の甘さや旨さの源となります。北海道ではジャガイモや玉ネギの収穫が終わると、秋まき小麦の種まきが始まります。今年も収穫の秋が訪れました。この時期、北海道のおいしい野菜を堪能したいですね。