梅雨明けから一転、一気に夏が到来したことで、街を行き交う人々は表情をしかめながら顔や首もとの汗をぬぐっています。とはいえ梅雨寒(つゆざむ)という言葉も聞かれた7月だったせいか、8月らしい暑さも太陽の恵みもありがたいものですね。
ふるさとへ帰る人や、海外へ向かう旅行者によるラッシュが昨日あたりからピークを迎えているようですが、夏もあっという間に終わってしまいます。素晴らしい思い出をたくさん作ってくださいね。
さて、ちょっとした俳句の心得を毎回お送りしていますが、今回は「見るから観る」です。少し俳句に慣れてきた人が知識だけで句を作ったとしても、句会ではバレバレなことがあります。つまり自然や対象物に対して情をもって接すれば、見る目が肥えて、見えないものが観えてくるというのが客観写生であり、きらりと光る一句が生まれるのです。
俳句は単に言葉遊びだけでない、心の眼が必要なのかもしれませんね。
俳句をたしなまなくても、知っているとちょっと得意、おまけにボキャブラリーも増える、そんな古語の世界を少しだけご紹介しましょう。
読めると楽しい古語「し・す・せ・そ 行 名詞編」
俳句を完成させるためには、何度も考え直す推敲が必要ではありますが、初心者には古語はハードルが高いのかもしれません。けれども、古語を使うことで、いいたいことがいえたり、格式が上がったりもするのです。
今回は「し・す・せ・そ」の名詞の読み方です。レッツ・チャレンジ!
Q1 「静寂」 *ヒント:3文字
Q2 「下枝」 *ヒント:3文字
Q3 「東雲」 *ヒント:4文字
Q4 「殿」 *ヒント:4文字
Q5 「漁」 *ヒント:4文字
Q6 「術」 *ヒント:2文字
Q7 「背」 *ヒント:2文字(セ行)
Q8 「日照雨」 *ヒント:3文字
Q9 「背」 *ヒント:3文字(ソ行)
Q10 「某」 *ヒント:4文字
答え合わせで古語の意味を覚えよう!
全部読めた方は相当な“通”かもしれませんよ!
答えと意味は以下の通りです。
A1 「静寂」 読み:しじま
意味:静まりかえっていること。無言、黙とも書く
〈森といふ大きしじまよ寒の内〉上田五千石
A2 「下枝」 読み:しづえ
意味:下の方の枝
〈下枝より咲き上りつつ花夕べ〉永井東門居
A3 「東雲」 読み:しののめ
意味:明け方、夜明け
〈しののめや露の近江の麻畠〉与謝蕪村
A4 「殿」 読み:しんがり
意味:列などの最後尾
〈しんがりをよろこぶ家鴨なり暖か〉秋元不死男
A5 「漁」 読み:すなどり
意味:漁をすること、漁をする人
〈漁の父の小舟へ凧伸ばす〉秋元不死男
A6 「術」 読み:すべ
意味:手段、方法、てだて
〈惰性また身を守るすべか夕凪す〉草間時彦
A7 「背」 読み:せな
意味:背、背中
〈ひとやさし背に置かれし冬日また〉木下夕爾
A8 「日照雨」 読み:そばへ(そばえ)
意味:日の降っているときに降る雨
〈日照雨来ぬ島の匂ひの藪椿〉山田みずゑ
A9 「背」 読み:そびら
意味:背、背中、うしろ
〈ふるさとの山河そびらに夏痩せたり〉三橋鷹女
A10 「某」 読み:それがし
意味:わたくし。男性が使う
〈某は案山子にて候(そろ)雀どの〉夏目漱石
(参照:俳句のための古語辞典 株式会社学習研究社/広辞苑/合本俳句歳時記/俳句開眼100の名句 ひらのこぼ・著 草思社)
日常で使ってみたい古語もある
今回は一字で読む漢字や、同じ漢字でも読み方が違うものもあり興味深かったですね。「殿(しんがり)」などは、“行列の殿はここです!”といった使い方ができるかも!?
「かっこよくて面白い古語の世界」名詞編も半分に達し、だいぶ慣れてきたのではないでしょうか?
次回からは動詞・形容詞などワンランク上の古語もご紹介していきます。お楽しみに!