スノーボードシーンではだいぶ以前から、スキーシーンではここ数年になって頻繁に使われるようになった言葉があります。それが“フリーライディング”です。一体なに?と、思われる人も多いかもしれませんが、その意味はいたって簡単。読んで字のごとく「自由に滑る」スタイルのことを指します。今回はそんな、いま話題のフリーライディングの世界をご紹介!
話題のフリーライディングってなに?
“フリーライディング”とは、しっかりと圧雪された斜面を滑るのではなく、パウダースノーや変化に富んだ、いわゆる地形が出ている斜面を、スムーズに自由自在に楽しみながら滑るスタイルのことを指します。
国内では、このフリーライディングが徐々に注目を集めつつあります。これまで判で押したように、誰もが同じような形で滑ることをよしとされる風潮にあったスキーシーンでは、とくに顕著。パウダースノーやバックカントリー(ゲレンデのように整備されていない雪山の斜面)が注目を集めるにつれ、形にこだわらず、自由に楽しく滑るフリーライディングへと傾倒するスキーヤーが増加傾向にあります。
また、この層の拡大傾向にあわせるように、フリーライディングをベースとした大会も徐々に開催されるようになっています。
世界への扉となる「Freeride World Qualifier」
今シーズンから、新潟県の舞子スノーリゾートをはじめ、全国のいくつかのゲレンデでフリーライディングの大会「Freeride World Qualifier(以下、FWQ)」が開催されています。
世界的な大会として開催される「Freeride World Tour(以下、FWT)」の下部大会として開催されるFWQは、スキー、スノーボード、それぞれのクラスで男女別々で競われます。この大会は、整備されていない斜面を、それこそ自由な滑走ラインで滑り、滑りのテクニックや総合的なパフォーマンスの高さを競い合う採点競技です。ちなみ、FWTの初戦は3年前、長野県の白馬村で開催されました。
FWTやFWQの採点のポイントは、5つあります。ひとつは、滑走ラインの難易度です。大会で使用する斜面の中で、いかに難しい滑走ラインをチョイスするかが問われます。次に、コントロール。選手が選んだ滑走ラインの中で、いかに滑りがコントロールされているかが重要視されます。バランスを崩したり、転んだりすると大きく減点されます。
そして、流動性。いかに滑りがスムーズかが問われます。スピードの強弱が激しく、また滑りの途中で止まったりすると減点されます。4つ目がジャンプ。これは、フリーライディングでとくに重要なポイントです。ジャンプの大きさやトリック、そして着地の正確性が問われます。着地で大きくバランスを崩すと、それこそ大きな減点となるので選手はとくにこの点を注意します。
最後に、技術です。闇雲に滑っていては、高得点は得られません。しっかりとスキーやスノーボードを操作できているかにジャッジの目が注がれるのです。
未来のスターライダーの登竜門「Freeride Junior Tour」
FWQは、4つのカテゴリーに分かれます。そして、それぞれ1(ワン)スター、2(ツー)スターといった呼び名がついていて、その中でも4(フォー)スターがカテゴリーの中で一番ランクが高く、1スターが入門編といった位置付けになります。世界大会を目指すスキーヤーやスノーボーダーは、こうした下部大会でポイントを稼ぎ世界大会への出場権獲得を目指します。
今回、舞子スノーリゾートで開催された大会は1スター。老若男女、アルペンレーサーからインストラクター、一般スキーヤー&スノーボーダーと、ジャンルに偏ることなく20代の若手から50代のおじさんライダーまで、幅広い年齢層の選手たちが参加。全体的に和気あいあいとした雰囲気がありましたが、滑りでは誰もが真剣な眼差しで勝負に挑んでいた姿が印象的でした。
そして、舞子スノーリゾートの大会では、18歳以下のスキーヤーやスノーボーダーによって競われる「Freeride Junior Tour(以下、FJT)」も開催されました。実際に参加したジュニアを見ると、下は小学生から上は高校生までと、年齢的に広い範囲から参加がありました。
これからのシーンを担うジュニアが、持ち前のスキルやスタイルをフルに発揮して元気に滑っている姿に、大きな活力と勇気をもらえること請け合いです。
自由に楽しくフリーライディングを楽しもう
世界的な潮流と大会開催をきっかけに、国内でも大きく注目され出したフリーライディング。これまで、型にはまったようにキレイにうまく滑ることが美徳とされてきた雰囲気がある国内のスキーやスノーボードシーンにあって、場合によってはその雰囲気に息苦しさを感じた人も多かったかもしれません。それが、スキーやスノーボードに、いまひとつ取っつきにくさを生み出していたようにも感じます。
そんな状況に現れたフリーライディングは、国内シーンの新たな潮流として受け入れられる空気を高い感度で発しています。なぜなら、そこには“自由に滑る”楽しさがあるからです。アルペンレースや基礎というようにジャンルに偏ることなく。そして、うまい下手に関係なく、ただ目の前にある斜面を自由に楽しく滑る。そこだけにこだわるスタイルは、多くの人々を受け入れる懐の深さがあり、また誰にでもチャレンジできるスタイルでもあります。
この冬は、形にこだわらず自由なマインドでフリーライディングな滑りを楽しんでみてはいかがでしょうか!
見方 勉
フリーランスエディター
スキー専門誌の編集長を経て、現在はフリーランスの編集者・ライターとして、スキー・スノーボード関連を中心に様々な記事を執筆する。雪国・岩手に育ちながら、スキーを本格的に始めたのは高校を卒業してから。パウダースノーも好きだが、しっかり整備されたグルームバーンでレールターンをするのも好き。今季の目標は、3回はファミリースキーに行くこと。