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「知って得する季語」秋なのに春!?秋の季語「竹の春」の不思議


9月に入り、この夏の猛烈な暑さが少しずつ和らぎつつありますが、これから秋になって現れる夏バテにも、注意したいところですね。

さて、竹といえば美しい竹林を連想される方も多いのではないでしょうか? 代表的なところでは京都の嵯峨野、鎌倉の報国寺など、等間隔に並んだ真っ直ぐな竹林は、いかにも清々しい趣がありますね。一方、暮らしの中でも、筍は春の風物詩であり、独特の触感と旬を堪能できる山の恵みとなっています。

ところが季語では、春の竹を「竹の秋」、秋の竹を「竹の春」と呼び区別しているのです。一体なぜこのように呼ばれるのか、そもそも竹はどんな植物なのかを調べてみました。


たかが竹、されど竹。ミステリアスすぎる竹の生態とは?

日本の国土は、森林が約66%を占め、そのうちの約50%が天然木、40%が人工林(杉や檜など)で、残りが竹林などだそうです。主な竹は、マダケ、モウソウチク、ハチクなどで、種類は600種以上あるといわれています。実際周りを見渡すと、大きい小さいに関わらず、よく竹林を見かけますよね。

実はそんな身近な竹が、かなりミステリアスな植物だったのです。

竹林はクローンの集合体だった!

竹は「地下茎」と呼ばれる一つの根っこでつながっています。それらが横に広がり、新しい竹を次々と量産(これが筍)。また、つながっている竹は同じ遺伝子を持っているコピー、すなわちクローンなのです。

竹は草の仲間ってホント? 

主な竹は、イネ科イネ目タケ亜科に属します。信じがたいとは思いますが、れっきとした草の仲間であり、イネ科なのは、中が空洞で稲と同じ特徴を持っているからだとか。

脅威の成長能力!

春に竹の子として作られる竹は、日ごとにグングン成長します。そのスピードは、長い時だと日に1mを超えることもあるそう。高さ約20mほどになるまで、たった3~4カ月しかかからないと成長力にも驚かされますね。

一斉に枯れるミステリー

先述のように、竹は一つの根っこでつながっているクローンですので、枯れるときも一斉に枯れてしまいます。そのタイミングは約60年~120年といわれ、前ぶれとして「竹の花」が咲くといわれています。竹の花は稲の花と似ていて、不吉の前ぶれなどと恐れられているそうですよ。

参照:農林水産省

竹の花

竹の花


竹は秋が美しい! 歳時記から読み解く「竹の春」本当の理由

さて、「竹の春」「竹の秋」と呼ばれる理由は、なんとなく想像つきましたか?

歳時記では以下のように説明しています。

──「竹の秋」……春に繁殖期を迎える竹は、地下茎で繋がっているので、竹の子に栄養分を与えるため青々しさがなくなり、ほかの竹の葉が黄葉してしまう。これが、秋の黄葉のように散るため、「竹の秋」と呼ぶ──。

──「竹の春」……竹の子として成長した若竹も、秋には立派な竹となり、親竹も青さを取り戻すため、「竹の春」と呼ぶ。また、竹を切る時期も、この頃が選ばれる。滅多に咲かない「竹の花」も、たいがい秋に咲くので、秋の季語とされる。ちなみに、黄葉した葉は秋に青く揃うが、一斉に散るのではなく、散っては新しい葉と、緑の葉が消えないようになっている。「竹落葉」は夏の季語──。

参照:入門歳時記 大野林火監修 角川学芸出版

── 言葉や漢字の成り立ちを知ることは、日常生活に膨らみを持たせてくれるはず。

一年中青いと思っていた竹も、そうではなかったのですね。美しい竹林を見るなら秋が断然おすすめです。

けれども、生活様式の変化などで、使われなくなった竹林の放置などの問題があるのも事実。今回の「知って得する季語」で、そんな社会問題を考えるのもよい機会かもしれませんね。

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