4月に入り、晴れやかな日が続いています。新しい生活を始める方も多いことでしょう。引越しで体力を使ったときは、ガッツリとんかつを食べたい!
そこで登場するのがソースです。普段、何気なく使っていますが、野菜や揚げ物、カレーなど、いろいろなおかずにそのままかけたり、料理にちょっと加えて隠し味に使うこともあります。我が家ではご飯にかけて食べる人もいるくらい、定番の調味料です。
同じソースでもウスターソース、中濃ソース、濃厚ソース(とんかつソース)といろいろな種類がありますね。気分を変えてみようといつもと違う種類のソースを買うと「美味しいけれどなんか違う」といわれてしまうことも。
そこで、この3つのソースはいったい何が違うのか、またウスターソースにまつわる話について、調べてみました。
違いその1:ソースの定義は「茶色又は茶黒色」をした「液体調味料」
ウスターソースと中濃ソース、そして濃厚ソース。
その違いは「農林物資の規格化等に関する法律」という法律に基づいた規格によって定められています。
まず、これら3種類のソースは、すべて「ウスターソース類」に分類されます。
その定義では、ウスターソース類は、「茶色又は茶黒色」をした「液体調味料」をいいます。
しかも、
1:野菜もしくは果実の搾汁、煮出汁、ピューレなどに砂糖類、食酢、食塩、香辛料を加えて調製したもの
2:1にでん粉や調味料等を加えて調製したもの
と、決められているのです。
つまり、茶色っぽい色でなければウスターソースとは言わないのですね。
違いその2:ソースの粘り気までしっかり定められていた
次に、ウスターソース類が規格で分類されているのは、その「粘り気」でした。
■ウスターソース:粘度が0.2Pa・s未満のもの
■中濃ソース:粘度が0.2Pa・s以上2.0Pa・s未満のもの
■濃厚ソース:粘度が2.0Pa・s以上のもの
※「ウスターソース類の日本農林規格」より
※「Pa・s」は国際単位系(SI)による粘度の単位で、「パスカル秒」のこと
簡単にいってしまえば、ウスターは「さらっとしている」、中濃は「とろみがある」、濃厚は「どろっとしている」ということでしょうか。数値で決められている粘度によって、種類が違ってくるわけです。
違いその3:味の違いは規格によって明らか
もちろん、ソースの違いが粘度だけであるわけがありません。農林水産省の規格では、ウスターソース類に「特級」と「標準」の区分があります。原材料は同じですが、食酢を使用するのは標準、醸造酢に限られるのが特級です。また、食品添加物では、酸味料と乳化剤を使用していれば標準、使用していなければ特級となります。
また、各ソースの規格内容を特級で比較してみると、野菜及び果実の含有率、食塩分に大きな違いがあることがわかります。
■ウスターソース:野菜及び果実の含有率は10%以上、食塩分は11%以下であること
■中濃ソース:野菜及び果実の含有率は15%以上、食塩分は10%以下であること
■濃厚ソース:野菜及び果実の含有率は20%以上、食塩分は9%以下であること
つまり、ウスターソースはさらっとして塩気があり、ソースの濃度がコクになるにつれて野菜や果実を多く含むため甘さを感じる、ということになるでしょうか。
こぼれ話その1:ウスターソース誕生のきっかけと日本初のソース
ウスターソースは19世紀初頭、イギリスの「ウスター」という町で生まれたといわれています。
主婦が家庭で余った食材に調味料を加えて保存していたら、ソースができていたというのがはじまりなのだとか。その後、その土地の貴族が、当時イギリスの植民地だったインドからソースの作り方を持ち帰り、商品化しました。これが世界初のソースメーカー、リー&ペリン社になります。
日本初のソースは、1885年に誕生しました。
代々医者の家系で生まれ育った安井敬七郎さんという人が、ドイツの工学博士と食事をしていた時のこと。「どうして日本には美味しいソースがないのでしょう」という博士の言葉が、ソースづくりのきっかけになったそうです。当時、ソースは一般には知られておらず、販売は薬屋さんに託していたと考えられています。
その後、安井敬七郎さんはイギリスのリー&ペリン社でソースづくりの指導を受け、国産ソースづくりを本格化したのでした。