古くから暦の上では立春を春のはじまりとしています。旧暦では昨日より新年がスタートし、本日より春の耕作始めにあたり、五穀豊穣を祈る伊勢神宮のお祭り祈年祭がはじまっています。「としごいのまつり」とも呼ばれます。「とし」とは稲の美称であり、「こい」は祈りや願いで、お米を始めとする五穀の豊かな稔りを祈ることを意味します。
農耕が生活のすべてであった時代、豊作を祈ることは国家の安泰、国民の繁栄を祈ることに他なりませんでした。そのため祈年祭は国家規模で執り行われ、奈良時代の『延喜神名式(えんぎじんみょうしき)』によると、神宮を始め全国2,861社の神々に幣帛(へいはく)が奉られていました。「神嘗祭」「新嘗祭」とならぶ伊勢神宮の公式祭典です
本日は、GI値が低くミネラルや植物繊維が豊富で最近注目されてきたそんな 「五穀」にまつわるよもやま話をみていきましょう。
農業にまつわる祭典、伊勢神宮の「祈年祭」「神嘗祭」「新嘗祭」とは?
春に豊作を祈り、秋の収穫に感謝する稲作を中心とした営みを、日本人は2000年以上繰り返して来ました。
・祈年祭(きねんさい)
神宮では天照大御神をはじめとする神々にお食事をお供えする大御饌(おおみけ)の儀が早朝行われ、続いて勅使が天皇陛下の幣帛を奉る奉幣(ほうへい)の儀が行われます。祈年祭は両正宮に引き続き2月23日まで、すべての宮社で執り行われます。
・神嘗祭(かんなめさい)
年間1500回に及ぶ神宮の恒例のお祭りの中でも、最も重要なお祭りが神嘗祭です。
神嘗祭は、その年に収穫された新穀を最初に天照大御神にささげて、御恵みに感謝するお祭りで、神宮の最も由緒深い祭典です。浄闇の中、午後10時と午前2時の二度にわたって由貴大御饌の儀が行われ、神宮神田で清浄に栽培された新穀の御飯・御餅・神酒を始め、海の幸、山の幸をお供えし、明くる正午には、勅使をお迎えして奉幣の儀を奉仕します。御卜(みうら)、御神楽(みかぐら)などの諸祭を行います。神宮神田(じんぐうしんでん)で行われる神田下種祭(しんでんげしゅさい)、秋の抜穂祭(ぬいぼさい)、御酒殿祭(みさかどのさい)、御塩殿祭(みしおどのさい)、大祓(おおはらい)があり、神宮の年間の祭典は神嘗祭を中心に行われているといっても過言ではありません。五穀豊穣を祈るこのように神嘗祭は、諸神に先立ち収穫の感謝を天照大神に捧げ、翌11月に天皇陛下は新嘗祭を行われて天神地祇すべての神々に収穫を感謝されるのです。古来お米を主食として生きてきた日本人にとり、神嘗祭は重要な祭儀であり、その意義は今日も古代から一貫して変わることはありません。
お祭りでは秋の実りに感謝申し上げ、皇室の弥栄、五穀の豊穣、国家の隆昌、並びに国民の平安を祈願します
・新嘗祭(にいなめさい)
「しんじょうさい」ともいい、「新」は新穀を「嘗」は奉ること意味し、収穫された新穀を神に奉り、その恵みに感謝し、国家安泰、国民の繁栄をお祈りします。現在、このお祭りは毎年11月23日に宮中を始め、日本全国の神社で行われていますが、特に宮中では天皇陛下が自らお育てになった新穀を奉るとともに、御自(おんみず)からもその新穀をお召し上がりになります。収穫感謝のお祭りが11月下旬に行われるのは東北や北陸などの収穫を天皇が待っておられると説明されています。
神宮では神嘗祭で新穀が奉られるため、新嘗祭はありませんでしたが、明治5年に勅使が差遣されて行われたのが始まりです。
参拝時間内の祭典については、参道などからご覧になれます。 ※夜間の参拝停止時間中の祭儀は奉拝できません。
★参照 伊勢神宮公式ページ 年間行事
五穀豊穣の「五穀」とは?
「五穀豊穣」(穀物が豊かに実ること)では具体的な五種を指さず、穀物全般の総称として用いられています。
主要な産物として限定する場合も、時代や地域によって違っており、一定していないようです。また「穀物」の範疇に含まれない栽培作物、食用以外にも応用できる重要な栽培作物を「五穀」に加える例もあるようです。豆や麻などがしばしば五穀に挙げられたのはその典型です。日本においては、「いつつのたなつもの」あるいは「いつくさのたなつもの」とも読まれれることも。
現代においては、米・麦・粟・豆・黍(きび)または稗(ひえ)を指すことが多いようです。
これら五種をブレンドした米を五穀米(ごこくまい)と呼び、また、五穀米とは日本初の五穀米商品として石川商店から発売されている商品に使われている名称(登録商標)でもあります。
古来でいう五穀とは、
稲・麦・粟・大豆・小豆(『古事記』)
稲・麦・粟・稗・豆(『日本書紀』)
稲穀・大麦・小麦・則豆・白芥子 - 『成就妙法蓮華経瑜伽智儀軌』
大麦・小麦・稲穀・小豆・胡麻 - 『建立曼荼羅護摩儀軌』
米・麦・粟・黍・稗 - 『日葡辞書』
そして、近世に入ると、重要な作物の意味で「五穀」の言葉が用いられ、必ずしも5種類に限定されなくなりました。
稲・畠稲・麦・小麦・蕎麦・粟・黍・蜀黍・稗・大豆・赤小豆・緑豆・蚕豆・豌豆・ささ豆・へん豆・刀豆・胡麻・よくい - 『農業全書』
いずれにしても、主食は今のように白米に偏った食べ方ではなく、五穀のものをブレンドしたり、バランスよく食べられておりました。
五穀や雑穀は、ミネラル、食物繊維が豊富で低GI食品として注目されています!
東京オリンピックにむけて、運動や食事の状況を見直し国民の健康増進をはかる活動が増えてきています。キヌアのサラダは、ブームになりましたが、さらに鉄分やミネラルが豊富ということで「アマランサス」がWHOでも「未来の食物」として注目されています。五穀の中でも、雑穀たちは、香ばしい香りやもちもちっとした食感、ぷちぷちとした舌ざわりが楽しめて、意外に愛好家も多いです。少し発酵させて頂く発酵雑穀米や発酵玄米を食べられているかたもいらっしゃいます。
日本人が白米のみを多く食べるようになったのはここ数十年で、芋や豆、雑穀なども含み主食だった時代は長かったのです。このため国外から白米を輸入するようなことにも。
GI値はグリセミック指数のことで、食後のの血糖値の上昇度合いを数値化したものです。
100gあたりの白米のGI値は8、雑穀米(五穀米)のGI値は55、発芽玄米のGI値は51です。白米と比べてGI値が低い雑穀米や玄米は、食後の血糖値が上昇が緩やかになります。食後の血糖値の急上昇はインスリンの過剰分泌に繋がります。
過剰に分泌されたインスリンは、ブドウ糖を吸収する際に余ってしまい、中性脂肪となって蓄えられてしまいます。
GI値の低い食品は、食後の満腹感もよいという声もあります。これを機会に雑穀レシピや雑穀米生活に取り込んでもいいですね。消化が若干悪いものもあるため、よく噛んでいただくことをおすすめします。
雑穀をつかったレシピ(はくばく)
この寒さに乾燥、花粉症やインフルエンザなど、外敵の多い季節です。この1年が実りあるものとなりますよう心身共に良いものを頂き活力をつけていきたいですね!