6月に入り、アジサイの季節がやってきました。突然の雨に濡れたりして気分が沈んでしまいそうになりますが、色鮮やかなアジサイが咲くのを楽しみにしている人も多いのではないでしょうか。今となってはたくさんの人に親しまれているアジサイですが、実は昔はあまり人気の花ではなかったそうです。
今回はアジサイの歴史と逸話をご紹介します。
『紫陽花』と書いて『アジサイ』。どうして『紫陽花』って書くの?
日本原産のアジサイが初めて書物に登場したのは、奈良時代のことでした。日本最古の和歌集である『万葉集』に登場しています。万葉集には様々な植物が記されていますが、アジサイが詠まれている和歌はわずか2首だけだそうです。
●言(こと)問はぬ 木すら味狭藍(あじさい) 諸弟(もろと)らが 練(ねり)の村戸(むらと)に あざむかえけり
●安治佐為(あじさい)の 八重咲く如く やつ代にを いませわが背子(せこ) 見つつ思はむ(しのはむ)
上の2首が、万葉集に記されていた和歌です。これらの和歌を読んでみるとわかるように、万葉集が作られた時代には『紫陽花』という表記は使われていませんでした。
私たちに馴染みのある『紫陽花』という表記になったのは、平安時代のことです。学者であり歌人の源順(みなもとの したごう)は、中国の白楽天の詩を読んだ際、その詩に記されている『紫陽花』と、日本でよく知られるアジサイが同じものだと考えました(実際は別種の植物だったようですが…)。このことをきっかけに、アジサイに『紫陽花』という漢字があてられるようになったのです。
源順がアジサイと勘違いした、中国の『紫陽花』とはどんな植物だったんでしょうね…。
移り気?浮気?アジサイの花言葉とその由来
みなさんは、アジサイの花言葉を知っていますか?アジサイの花言葉は、「移り気・浮気」です。ずいぶんネガティブな花言葉ですよね…。それでは、なぜこのような花言葉がつけられたのでしょうか。これには、アジサイの『色』に理由がありました。
アジサイは土壌が酸性かアルカリ性かで色が変わると言われています。そのため、「同じ場所に植えていても年々花の色が変化していく」なんてことが起こるのです。土壌の酸度によって色が変化するアジサイには、『七変化』という別名までつけられています。
このように、アジサイは土壌によって色がコロコロと変わる植物です。アジサイの色の変わりやすさが、人の心の移ろいのように見えたことから、「移り気・浮気」というような花言葉がつけられたとされています。
アジサイは、ネガティブな花言葉からかつてはお祝い事には避けられていました。しかし「一家団欒」や「元気な女性」「寛容」など、花の色や国によってはポジティブな花言葉も多くあります。そのため、現在では結婚式などのお祝いの場でも使われているようです。
雨の季節に様々な色合いを見せてくれるアジサイ…。いろんな花言葉があるので、ぜひ調べてみてくださいね。アジサイの見方が変わるかもしれませんよ。
アジサイの名所と言えば「お寺」?その理由は?
今となっては雨の季節の風物詩として人気の高いアジサイですが、昔はそれほど人気のある花ではなかったようです。というのも、万葉集をはじめとする和歌集などの書物には、アジサイについての記述があまりないのです。
ようやく人気が出てきたのは、第二次世界大戦後のこと…。アジサイが観光資源として注目されたのがきっかけでした。現在でも、アジサイが咲く季節になるとたくさんの観光客が名所に訪れます。
「日本のアジサイの名所」と聞いて、「お寺」を連想する人は多いのではないでしょうか。それではなぜ、日本のアジサイの名所にはお寺が多いのでしょうか。
実はアジサイの季節である6月は気温の変化が激しく、昔はこの季節に流行病で亡くなる人がたくさんいました。そのため、アジサイは死者に手向ける花と考えられていたのです。このことから、かつて流行病が起こった地域では、お寺にたくさんのアジサイを植えるようになったとのこと…。
アジサイの名所にお寺が多いのには、こういった理由があったんですね。
今回は、アジサイの歴史や逸話をご紹介しました。気分が沈みがちな梅雨の季節ですが、アジサイを見に少し散歩してみるのもいいかもしれませんね。
<参考・参照サイト>
花と贈りものだより
はなごころ