陽射しに暖かな春の気配を感じる季節になりました。
今が旬と言えば、ヘタの部分が出っ張ったデコポン。なんとも不格好な外見ですが、食べてみると、甘くて果汁もたっぷり。一見ゴツゴツした厚手の皮も手で簡単にむけるくらいむきやすくて、しかも中のじょうのう膜は薄くて種もほとんどないので袋ごと食べられる、人気の果物です。
でも実は、この特徴的な外見のせいで、デコポンはその誕生からしばらくは、日の目を見ない不遇の時代を過ごしていました。長い冬を越えて春を迎えたデコポン。食べてみると、いろんな意味で元気がもらえそうです。
失敗作(?)から人気者へ
デコポンは1972年に、長崎県の農林水産省果樹試験場(当時)で生まれました。ただ、この時はまだデコポンという名前はありませんでした。それどころか、その不格好な見た目などから品種登録もされなかったそうです。
そんなデコポンに転機が訪れるのはそれから約20年も後のことです。
この名もない果物はその後、熊本県の不知火町(現、宇城市)で「不知火(しらぬひ)」という品種で栽培されるようになりましたが、その中でも糖度13度以上、クエン酸1.0以下といった基準を満たしたものがデコポンと名付けられました。1991年3月1日に初出荷されると、ままたく間に人気の果物になりました。
初出荷を記念して、3月1日は「デコポンの日」に制定されています。
デコポンを名乗るのは難しい?
デコポンは、不知火の中でも糖度などの一定の基準を満たしたものだけが名乗ることができる、特別なものです。この基準は全国で統一された基準なので、デコポンという名であれば、その味は保証されているということになります。
さらに、デコポンという名は1993年に熊本県果実農業協同組合連合会が商標登録しています。その加工品も含め「日本園芸農業協同組合連合会傘下の農業団体(JA)および柑橘生産のある農業団体(JA)」以外の商品には使用できません。
そのため、生産者によっては不知火という名前や、そのほかさまざまな名称で出荷されています。
海外ではスモウ?
デコポンの人気は日本国内だけではありません。
北米などでは、スモウマンダリン(Sumo Mandarin)という名前で、栽培、販売されているようです。「日本といえば相撲」という発想なのかもしれませんが、デコポンの形をよくよく見てみると、何となく力士の姿にも見えてくるから不思議です。
デコポンの名前の由来は、その突起「デコ」とポンカンの「ポン」(「清見(きよみ)」と「ポンカン(中野3号)」という品種を交配して生まれていることから)からといわれています。また、おでこの「デコ」に由来している説もあるとか?その独特な名前もまた、頭の部分が出っ張った特徴的な姿にふさわしく、印象的です。
一時はその不格好な姿から、品種登録さえされなかったデコポン。人気の裏には欠点と思われていた外見を逆手にとったかのようなネーミングも、大きな役割を果たしているようです。