「ざくろ石」の別名でも呼ばれるガーネット。深紅の輝きは、お正月などのお祝いごとにもよく似合いますね。
持ち主を守ってくれる宝石、また血を連想させる色から「勇気の象徴」として、古くから人びとに大切にされてきました。
そんなガーネットですが、実は何種類かの鉱物をひとくくりにした呼び名なのだそうです。
今回は、1月の誕生石、ガーネットの物語をご紹介します。
赤くないガーネットも、たくさんあるってホント?
ガーネットの語源は、ラテン語で「種子」を意味する「granatus」。
つぶつぶした結晶が集まった様子が、ざくろの実に似ていることから「ざくろ石」の異名でも呼ばれます。
一般的に知られているのは、赤く丸い結晶のガーネット。しかし、ピンクやグリーン、褐色のガーネットも存在します。
これらは、同じ結晶構造を持ちますが、化学組成の違う鉱物。
実は、こうした何種類の鉱物が、まとめて「ガーネット」と呼ばれているのです。
赤いガーネットの正式名称は、アルマンディン・ガーネット。鉄とアルミニウムが主成分です。
現在、宝石として出回っているものの多くは、このアルマンディン・ガーネットにあたります。
時代に翻弄された、ボヘミア産のガーネット
かつてガーネットの産地として名をはせたのが、チェコのボヘミア地方。
青銅器時代の遺跡から、ボヘミア産のガーネットを使った首飾りが出土するほど、古くからヨーロッパ全土で知られていました。
ボヘミアで産出するガーネットの特徴は、炎のような色をしていることから、
ギリシャ語の「pyropos(炎)」を語源とする「パイロープ」と呼ばれ、大変な人気を博しました。
そんなボヘミア産ガーネットの運命が狂ったのは、産業革命の時代。
「中産階級」と呼ばれる豊かな人びとが登場し、それまで上流階級の人びとしか縁のなかった宝飾品を求めるようになりました。
ヨーロッパ中でボヘミアン・ガーネットが流行すると、乱掘によりガーネットの枯渇がはじまり、また品薄になったことで価格が高騰。
本物のガーネットに代わるものをと、ガラス製造に力を入れたことが、かのボヘミアンガラスの隆盛につながったというのです。
サンドペーパーの、あの色はもしかして?
硬度が高いことで知られるガーネット。
粉状にして紙やすりの表面に貼りつけるなど、研磨剤としても利用されてきました。
もっとも、近年は天然ものではなく、人造のガーネットが使われることも多いのだとか。
ガーネットを贅沢に使ったことで知られるのは、なんといってもインドのマハラジャ。
大きなアルマンディン・ガーネットを磨いて、酒杯にすることもあったそうですよ。
まるごとガーネットで作った酒杯に注がれたお酒、どんな味がするのか知りたいですね!
色も形状もさまざまなガーネット。お値段は違っても、それぞれ個性があって魅力的です。
そういえば、1月はちょうど冬のセールの季節。
1月生まれの方も、そうでない方も、お気に入りのガーネットを探しにお出かけしてみてはいかがでしょうか?
参考:ジョージ・フレデリック・クンツ(鏡リュウジ監訳)「図説 宝石と鉱物の文化誌 伝説・迷信・象徴」(原書房)
塚田眞弘(松原聰監修)「天然石と宝石の図鑑」(日本実業出版社)