霧は秋の季語であり、秋に多く見られます。これからの時期に発生しやすいのは、移動性高気圧に覆われて夜間に良く晴れ、放射冷却によって地表付近の熱が奪われることによって発生する放射霧です。雲海と呼ばれるものも各地で見られ、前日との気温差が大きく 雨上がりで湿度が高く 風の弱い日が発生しやすい好条件のようです。近年は、全国的に霧日数が減少傾向となっているようですが、この時期ならではの自然の造形美を見に出かけてみては如何でしょうか?
●天空の城を出現させる「雲海」 尾根を越える「滝雲」から「気嵐」まで
霧は、空気中の水蒸気が冷えて凝結し、水滴になって地表面から空中を漂うもので、視程が1km未満の状態をいいます。空気は、含むことが出来る水蒸気の量が決まっているため、冷やされると水滴に変わるのです。
これからの季節に多く見られる霧は、放射冷却により陸地で発生するものです。晴れて風の弱い夜は、地表付近の気温が下がり、空気中の水蒸気が水滴になって空中に浮かぶようになります。水蒸気の量が重要となりますので、雨上がりなどで地表付近の湿度が高い場合などは、特に発生しやすくなり、これは「放射霧」とも呼ばれています。盆地で発生することが多い「雲海」と呼ばれるものは、この放射霧のタイプが多いようです。
また、海上や川の上で発生する霧もあります。こちらは、相対的に暖かい水面上に冷たい空気が流れ込むと、水面から蒸発した水蒸気が冷やされて湯気のような霧になるもので、「蒸気霧」や「気嵐(けあらし)」とも呼ばれています。こちらも天気が快晴または晴れで、風が弱く厳しい冷え込みとなった場合に、現れることがあります。
これらの多くは、晴れの日の早朝限定で見られる自然の造形美、シャッターチャンスを狙って現地を訪れる価値がありそうです。これからの時期、早朝はまだ暗く足元が悪いケースもあります。服装や靴などは、防寒や防水、防滑機能があるものを用意すると安心です。
●霧日数は年々減少 地球温暖化や都市化の影響による湿度の低下が一因か
一般的に良く聞かれる湿度〇〇%とは、相対湿度のことです。この相対湿度は、各気温毎に含むことができる水蒸気の総量に対して、何%の水蒸気が含まれているかを示したものです。同一の空気塊を考えた場合、気温が高い程湿度は低く、気温が低い程湿度は高くなります。
このため、地球温暖化や都市化による長期的な気温上昇が続く中にあっては、相対湿度(湿度)は、長期的には低下傾向が続いていくことになります。「湿度が低下していくということは、空気中の水蒸気量が減ることになりますので、霧の発生する可能性や日数も減少傾向になっていく」という解釈もできそうです。但し、都市化だけでは説明できない不規則な変動も見られ、未解明な部分も多くあるようです。
図の北陸地方の4地点の年間霧日数の変化を見ると、いずれも長期的に減少傾向となっています。中でも富山では、100年当たりに換算すると28日程度の減少となり、北陸の中では減少幅が最も大きくなっています。全国の減少幅に目を向けると、東京は100年当たりで56日、京都は同様にして101日とかなり大きく、札幌や仙台でもともに20日以上減少しているのです。
地球温暖化や都市化の影響による湿度の低下や、短時間の極端な降水が増えて降水頻度(回数)が減ってくると、霧が発生するチャンスの減少につながることもうなづけそうです。自然がつくりだす水墨画のような幻想的な風景を見られる頻度も長期的には減っていくのかもしれません。