
球界最大のニュースは張本勲さんの死去だろう。その張本さんに「阪神移籍」の可能性があったのは知られる話だ。少しだけ紹介する。東映の選手として、球界を代表する存在になっていた張本さんは親会社が日本ハムに変更となったことで居心地が悪くなった。75年オフのことだ。そこでオーナーに直訴し、移籍を検討。浮上したのが阪神だった。
当時の阪神指揮官・吉田義男さんに誘われて阪神入りを決断。関西に土地まで購入していたという。しかし話がまとまる寸前で、ミスターこと長嶋茂雄さん率いる巨人が出馬。一気に巨人入りに傾いたのである。
そのとき吉田さんに電話で断りを入れた張本さんは、当然、文句を言われると思っていた。ところが吉田さんは「よかったなあ!」と激励。張本さんはこれに感激の涙を流したという。8年前、前監督・金本知憲氏の野球殿堂入りパーティーで本人が話しているのを聞いた。
張本さんと言えば打撃はすさまじかったが、それに比べ、守備はうまくなかった。テレビで試合を見たことがあるが、実際にそうだったと思う。そこで頭に浮かんだ…と書くのもあれだが、なんとなく前川右京を思い出したのである。
最近は左打ちでも右投げが多いが前川は左投げ左打ち。張本さんと同じだ。守備が課題という面でも似ているような感じだ。違うのは張本さんほど打っていないことだろうか。これも失礼かもしれない。試合中止が決まり、前川に「張本さん死去」を聞いてみた。
「お会いしたこともないし、そもそも偉大すぎて。ボクがどうこうとは何も言えないです」-。ナイスガイの前川は神妙な顔でそう話したのである。
それでも、ここに来て前川の存在は大きいと思う。「6番以降問題」がクローズアップされるチーム状況。その中でもいろいろあったがここに来てやはり6番は前川という感じだ。
特筆すべきは巨人戦、そして東京ドームに強いことだ。巨人戦打率はセ・リーグ相手でベストの3割。そして東京ドームに至っては同4割1分2厘、17打数で2本塁打を含む7安打を放っているのだ。
「打順どうこうより、とにかく頑張るだけです」。そう言った前川が12日の直接対決、今季ラストの東京ドームという大一番で輝くことを期待している。
【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)
