
最終日の9月1日に26人が滑り込みで加入し、スペインリーグの今夏の移籍市場が終了した。ビッグ3の積極補強が目立った一方、ビルバオは唯一1ユーロも使わないクラブとなった。
■5大リーグではプレミアが圧倒
スペインリーグの補強総額は昨夏よりも5000万ユーロ(約92億5000万円)ほど多い7億5530万ユーロ(約1397億3050万円)。各クラブの財政面は回復傾向にあるが、過去最高を記録したコロナ禍前の19−20年シーズンに比べると、まだ6億ユーロ(約1110億円)も少ない。
欧州5大リーグの順位も昨夏と変わらず、プレミアリーグが2年連続で過去最高を更新し、41億2000万ユーロ(約7622億円)で他を圧倒した。セリエAが11億6000万ユーロ(約2146億円)で2位、ブンデスリーガが7億8180万ユーロ(約1446億3300万円)で3位、スペインリーグが4位、フランスリーグが6億510万ユーロ(約1119億4350万円)で再び最下位となっている。
スペインリーグとプレミアリーグの差は昨夏28億7375万ユーロ(約5316億4375万円)だったが、今夏は33億6470万ユーロ(約6224億6950万円)にまで開いている。補強総額が5分の1以下になっている理由として、スポンサー料や放映権料の違いに加え、スペインリーグの厳しいサラリーキャップ(選手の契約年数に合わせて分割された移籍金や選手年俸などの限度額)などが挙げられる。
これは移籍市場の活気を失わせ、例えば今夏、ベティスからラシン・サンタンデールに移籍したU−21スペイン代表FWパブロ・ガルシアのように、選手を泣く泣く放出しなければならない状況が生まれる原因になっている一方、無謀な浪費による財政破綻をなくし、下部組織の選手を積極的に起用する環境を作り出す要因とも考えられている。
■ディオマンデに231億円投下
スペインリーグの補強費トップはレアル・マドリード。カルバハルやアラバなどの功労者が去った中、2季連続メジャータイトル無冠の状況を変えるため、今夏のスペインリーグおよびクラブ史上の移籍金最高額1億2500万ユーロ(約231億2500万円)で獲得したコートジボワール代表FWディオマンデ(ライプチヒ)を筆頭に、スペイン代表DFククレジャ(チェルシー)、U−21スペイン代表FWカルロス・エスピ(レバンテ)、オランダ代表DFダンフリース(インテル)に計2億2500ユーロ(約416億2500万円)を費やし、フランス代表DFコナテ(リバプール)、ポルトガル代表MFベルナルド・シウバ(マンチェスター・シティー)をフリーで獲得した。13年ぶりに戻ってきたモウリーニョ監督のメンバーの仕上げとなり得たスペイン代表MFロドリ加入は叶わなかったが、十分な補強と言えるだろう。
■バルサはゴードンに148億円
サラリーキャップに悩まされ続けていたバルセロナは、カンプ・ノウの一部再開およびVIP席収入の復活が追い風となり、ようやく平常を取り戻した。昨夏を約1億5000万ユーロ(約277億5000万円)も上回る1億8400万ユーロ(約340億4000万円)を投資し、イングランド代表FWゴードン(ニューカッスル)を8000万ユーロ(約148億円)、スペイン代表MFロドリ(マンチェスター・シティを6000万ユーロ(約111億円)で獲得した。
さらに、ドイツ代表FWアデイェミ(ドルトムント)、U−19ベルギー代表FWビシウ(クラブ・ブルージュ)、ポルトガル代表DFカンセロ(アル・ヒラル)、クロアチア代表GKリバコビッチ)フェネルバフチェ)が加入。退団したレバンドフスキとフェラン・トーレスの代役として、最終日にブラジル人FWガブリエウ・ジェズス(アーセナル)の獲得に成功した。唯一、センターバックを補強できなかった点が指摘されているが、盤石の布陣を作り出している。
■Aマドリードはイ・ガンイン獲得
アトレチコ・マドリードは、フリアン・アルバレスのバルセロナ移籍騒動が注目されたが、最終的に残留決定。今夏の投資額は3番目の1億2300万ユーロ(約227億5500万円)。4000万ユーロ(約74億円)のデンマーク代表MFヒュルマンド(スポルティング)を筆頭に、グリーズマンの背番号7を受け継いだ韓国代表MFイ・ガンイン(パリ・サンジェルマン)、アルゼンチン代表DFクリスティアン・ロメロ(トットナム)、スペイン代表DFグリマルド(レバークーゼン)を獲得。さらに最終日、カナダ代表FWジョナサン・デイビッド(ユベントス)を期限付き移籍で手に入れ、攻守の強化に成功した。
■Rソシエダード準備不足否めず
日本人選手所属のクラブに目を向けると、昨年に続きチーム作りが出遅れた久保建英を擁するレアル・ソシエダードの補強費は、リーグ11番目の1000万ユーロ(約18億5000万円)。エルストンド、チャレタ=ツァルの退団、オドリオソラの長期離脱でセンターバックと右サイドバックが必要となる中、最初の補強が完了したのは移籍市場終了の4日前と準備不足は否めない。
最終的に850万ユーロ(約15億7250万円)でスペイン人DFエクトル・フォルト(バルセロナ)、150万ユーロ(約2億7750万円)の期限付き移籍でセネガル代表DFサール(チェルシー)を獲得したのみだ。さらに、昨季期限付き移籍でBチームに所属したDF喜多壱也を150万ユーロ(約2億7750万円)で買い取った。ブライス・メンデスが抜けた攻撃陣に関しては、既存の選手たちにその役割を託しつつ、オチエングとマルチャルの起用で対応している。
■バレンシア佐藤龍之介7億円超
開幕3戦未勝利、わずか1得点と、攻撃面が特に懸念されるバレンシアの補強費は、リーグ13番目の900万ユーロ(約16億6500万円)。スペイン人DFアルナウ・マルティネス(ジローナ)に500万ユーロ(約9億2500万円)、即戦力となった佐藤龍之介(FC東京)に400万ユーロ(約7億4000万円)を投じたほか、オランダ人DFデ・ハース(ファマリカン)、マリ代表MFディエング(アル・アハリ)をフリー、アルゼンチン人DFマフェオ(オリンピアコス)、イングランド人MFエリオット(リバプール)、オランダ人GKファン・オーベレン(イプスウィッチ)を期限付き移籍で補強し、ギド・ロドリゲスの残留に成功した。一方でセンターフォワードと新たなセンターバックの補強失敗による戦力不足を非難されている。
■デポルティボはオーバメヤンら
予想外に活発な動きを見せたのは、9年ぶりに1部復帰し、開幕3戦無敗で8位と大健闘しているデポルティボ。リーグ5番目の2580万ユーロ(約47億7300万円)を投資し、名前の知られている選手との契約を実現した。かつてバルセロナに所属したガボン代表FWオーバメヤン(マルセイユ)と元スペイン代表FWトラオレ(ウェストハム)、6月にスペイン代表デビューを飾ったGKレオ・ロマン(マジョルカ)らを獲得。最終日にもスペイン人MFカサド(バルセロナ)、ウルグアイ代表DFヒメネス(Aマドリード)の期限付き移籍に成功し、名門復活への強い意気込みを感じさせている。
その他、今季の欧州チャンピオンズリーグに出場するベティスがスペイン人DFフラン・ガルシア(Rマドリード)、セバージョス(Rマドリード)、アイルランド代表FWパロット(AZ)を獲得し、元スペイン代表MFカナレス(モンテレイ)が16年ぶりに古巣ラシン・サンタンデールに戻り、フランス人MFフォファナ(ミラン)が期限付き移籍でセビリアに加入したことも注目された。
■リーグの移籍収入1072億円超
スペインリーグ全体の今夏の移籍金収入は5億9590万ユーロ(約1072億6200万円)。トップのRマドリードは、ニコ・パス(コモ)、ゴンサロ(フルハム)など下部組織出身選手の売却で2億ユーロ(約370億円)以上の収入を得て補強費のほぼ全てを賄い、育成システムが優秀であることを改めて証明した。
これに、フェラン・トーレス(パリ・サンジェルマン)などを売却したバルセロナが8200万ユーロ(約151億7000万円)、ルッジェーリ(アストンビラ)やアルマダなどを放出したAマドリードが6050万ユーロ(約111億9250万円)、セビリアが4100万ユーロ(約75億8500万円)、プレミアリーグに2選手を売却したラヨ・バリェカノが3650万ユーロ(約67億5250万円)で続く。マラガが唯一、移籍金収入のないクラブとなった。
ワールドカップ北中米大会の影響を大きく受けた今夏の移籍市場が終わり、メンバーが確定した状態で全クラブが26−27シーズンに本格的に臨むことになる。リーグ戦3試合を終え、上位陣が好スタートを切った一方、中位以下に沈む日本人所属のクラブがこの状況をどのように脱却していくのか、その動向を追っていきたい。
■今夏のスペインリーグ各クラブの補強費
1)Rマドリード=2億2500ユーロ(約416億2500万円)
2)バルセロナ=1億8400万ユーロ(約340億4000万円)
3)Aマドリード=1億2300万ユーロ(約227億5500万円)
4)ベティス=3050万ユーロ(約56億4250万円)
5)デポルティボ=2580万ユーロ(約47億7300万円)
6)エルチェ=2280万ユーロ(約42億1800万円)
7)ラシン・サンタンデール=2100万ユーロ(約38億8500万円)
8)ヘタフェ=1950万ユーロ(約36億750万円)
9)ビリャレアル=1650万ユーロ(約30億5250万円)
10)セビリア=1300万ユーロ(約24億500万円)
11)Rソシエダード=1000万ユーロ(約18億5000万円)
12)アラベス=940万ユーロ(約17億3900万円)
13)バレンシア=900万ユーロ(約16億6500万円)
14)オサスナ=800万ユーロ(約14億8000万円)
15)セルタ=730万ユーロ(約13億5050万円)
16)エスパニョール=500万ユーロ(約9億2500万円)
17)レバンテ=310万ユーロ(約5億7350万円)
18)ラヨ・バリェカノ=60万ユーロ(約1億1100万円)
19)マラガ=30万ユーロ(約5550万円)
20)ビルバオ=0ユーロ
【高橋智行】(ニッカンスポーツコム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)
