
<天皇杯:町田3-0鹿島>◇準々決勝◇27日◇Gスタ
町田がホームで鹿島を3-0で下し、クラブ史上初の4強進出を決めた。前半にMF増山朝陽とFW藤尾翔太のゴールで2点をリードすると、後半1分にMF下田北斗が自陣から60メートルのスーパーゴールを決め完勝した。これで6月以降は公式戦13試合負けなし(12勝1分け)。初タイトルに向け、勢いは増す一方だ。広島、東京も勝利。神戸はPK戦でJ3相模原を下して、準決勝へ勝ち上がった。
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“揺りカゴ”が2度揺れた。歓喜のゴールパフォーマンスにゴール裏のサポーターも体を揺らした。1つ目はCKから増山が頭で押し込んだ。そして2つ目は藤尾が相手選手を背負いながら左へ反転し、左足で蹴り込んだ。これは藤尾自身へのものだった。その試合後、揺りカゴの誰のものかと問われると「生まれました。1つ目はヒロ君(MF前)で、2つ目は僕」と照れながら明かした。
町田の勢いが止まらない。6月以降の公式戦は12勝1分け。23日の横浜戦で連勝は11(リーグ戦は8)で止まったが、その試合は藤尾が累積警告で出場停止。その藤尾が戻った試合で、再び町田らしい強度の高い攻守が復活し、強敵鹿島をのみ込んだ。ちょうど6月から藤尾が1トップの先発に固定された。これに端を発し、負けていない。しかも藤尾がプレーした12試合は全勝となっている。
いい守備から攻撃に出るのが町田のスタイル。最前線の藤尾が積極的にボールを追い、それに連動して2列目、3列目が立ち位置を変える。この日の鹿島戦。後半1分にはスーパーゴールが飛び出した。相手パスカットからの下田のゴールだが、その先には最前線で藤尾がコースを切り、パスコースを限定。目立たない1つ1つのチームプレーの積み上げが、強い町田の素となっている。
黒田監督は「タフな選手でよく走る。彼がプレスに行くことで、シャドーや後ろの選手がいきやすくなっている」。スイッチ役となる藤尾の動きがチーム全体に躍動感を与え、攻守も引き締めている。クラブ初の4強入り。「リーグ戦も天皇杯もタイトルを取れる位置にいる。気を抜かずにやりたい」。エースとして、父親として藤尾は責任感を口にした。【佐藤隆志】