＜高校野球青森大会：弘前学院聖愛3－2青森山田＞◇23日◇準々決勝◇はるか夢球場
スタンドを前に立ち上がれなかった。今春センバツに出場した青森山田が準決勝で姿を消した。
菊池伊真主将（3年）は「メンバー外も朝早くから補助をしてくれて、3年生の仲間が心の支えでした。甲子園に連れて行き、『日本一』という結果で恩返しがしたかったです」と涙が止まらなかった。
最後の最後まで勝利を信じていた。プロ注目左腕の芹川を前に、8回までスコアボードには「0」が並んだ。それでも、3点ビハインドの9回、中学時代からともにプレーしてきた佐藤洸史郎外野手（3年）の2ランで1点差。「俺がいるから大丈夫。つないでくれ」。だが、菊池伊の願いは届かず、ネクスト・バッタースボックスから敗戦の瞬間を見届けた。「2年半の集大成として懸けていたので、自分が決めたいという思いは強かったです」と声を震わせた。
全ては勝利のために。自らを犠牲にし、険しい道を選んだ。青森山田シニアでは全国制覇を2度経験。中学2年の21年に初優勝、翌年には主将として連覇を成し遂げた。周りからの目が変わり、連覇を期待する声に中学生ながら重責を感じていた。
高校に入り、昨秋から新チームが始動。チームからは「お前しかいない」と主将に推薦された。だが、同夏は春夏通じて初の4強入り。またも、歴史をつくった次の代だった。「プレッシャーを背負いたくない」と一度は断った。それでも、浮かんだのは甲子園の景色。「中学で経験した自分が楽をしていたら勝てない」と主将を引き受けた。
「甲子園に戻り、校歌を歌う」という夢はかなわなかった。「昨年は甲子園ベスト4を経験させてもらいました。その舞台を後輩たちに経験させてあげられなくて申し訳ないです」。1年前は自分のことで精いっぱい。1度は嫌なことから逃げようともしていた。それでも今、口から出る言葉は仲間への思いと自責の念ばかり。この1年で大きく成長した。
次は大学野球の門をたたくつもりだ。「仲間のおかげでここまでこれました。大学4年間で一回りも、二回りも成長した姿をみせたいです」。ともに過ごした時間を胸に刻み、新天地へと羽ばたく。【木村有優】
