
<マイナビオールスターゲーム2025:全パ5-1全セ>◇第1戦◇23日◇京セラドーム大阪
オールスター初出場の全パの西武甲斐野央投手(28)が、特注の“家族愛”グラブをつけて投げた。
全パの5番手として8回に登板。初球は107キロのスローカーブを投じた。「僕は何か芸せなあかんキャラなので」。
その後は直球押しまくりで球宴マウンドを楽しんだ。2死後にはベンチからチームメートの今井を呼び、水を持ってきてもらうシーンもあった。
兵庫・西脇市のスポーツ用品店「野球一筋」のオリジナルブランド“播州グラブ”を普段のシーズン中から愛用しており、この日はサプライズで贈られた特注品を手にした。
兵庫県南部、明石より西側一帯はかつての播磨国にちなんで播州(ばんしゅう)と呼ばれる。甲斐野が生まれ育った西脇市も播州エリアで、今でも播州ラーメンを愛している。
今回は「播州」と漢字でロゴが入り、さらにウエブ部分には勇猛なライオンが表現されている。
実はこれ、甲斐野の兄でアーティストの耕一さん(35)がデザインした。
「桜」「感謝」「ライオン」の3テーマが込められている。
「桜」は耕一さんの兄、3兄弟の長男の思いだ。
3人が卒業した桜ケ丘小学校にちなむ。「野球を始めた小学生時代の初心を忘れず、いつまでも野球少年でいてほしい」という兄の願いが込められる。
「感謝」は3兄弟の父の願いだ。「ファンの皆さま、家族、球団関係者、播州グラブ、すべての支えてくださっている方々へ感謝の気持ちを忘れずに」との父の思いが込められる。
そして「ライオン」。目元には歌舞伎の隈取(くまどり)がオマージュされ「日本を代表するような選手になってほしい」という皆の願いが込められる。
特注グラブをプロデュースし、甲斐野に贈った「野球一筋」の西山孝彦代表(58)はこう話す。
「限られた時間の中で何度も試行錯誤を重ね、思いを込めた一品に仕上げました。甲斐野ファミリーの深い絆には常々感銘を受けております。とりわけ兄弟の仲の良さには頭が下がる思いです。現代の日本では家族の関係が希薄になりがちな中で、甲斐野家の家族愛に触れるたび心を打たれます。兄が父親の思いを受け取り、それをグラブというキャンバスに描く。共同制作で、世界に1つだけのかけがえのない特別なグラブが完成しました」
兄はベンチ上で見守ってくれた。弟の甲斐野自身は「藤川さんにはなれなかった。以上。見出し、これで行きましょう」とおどけたが、心の中では大事な人たちのために思いを込めて150キロ台をどんどん投げ込んだ。【金子真仁】