
<阪神2-1ヤクルト>◇13日◇甲子園
虎最速&自己最速の仰天アーチが飛び出した。阪神佐藤輝明内野手(26)が甲子園最速となる打球速度181キロの24号先制2ランを放った。6回無死一塁から浜風を切り裂いて右翼席にズドン。今季85試合目して早くも自己最多本塁打に並びシーズン40発ペース突入した。チームは2連勝で5カード連続の勝ち越しで、2位巨人とは9・5差。首位独走の勢いは止まらず貯金も今季最大19まで積み上がった。
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浜風も関係ない。佐藤輝の打球は甲子園の右翼方向へグングン伸びた。打球速度は181キロ。21年に計測開始して以降、甲子園ではシーズンで阪神選手史上最速だ。逆風を切り裂き、今季チーム初の甲子園右翼弾。バットを放り投げてゆっくり走り出す姿に、キングの風格がにじんだ。
「ちょっと普通の曲がりとは違うチェンジアップなんですけど。うまく対応できたと思います」
0-0で迎えた6回無死二塁。2-2から先発アビラの136キロチェンジアップを捉えた。「かなりいい感じだった」。5回まで得点圏に走者を進めながら、あと1本に苦しめられていた中での先制24号2ラン。打点62とともに両リーグ独走の本塁打数で、シーズンでは40発ペースとなった。
新人の21年、リーグ優勝の23年に並ぶ自己最多24号。「本当にいいペースで来ている。まだまだ打ちたいと思います」。今季、同期の伊藤将の登板試合は6試合すべてで1発を記録。日曜日の試合にもめっぽう強く、曜日別両リーグ最多7発目だ。「ウル虎の夏」として開催したこの日も、観戦する子どもたちのため、同期のために一肌脱いだ。
和やかな恒例のやりとりが背中を押している。甲子園の試合前練習時。OBの川藤幸三氏(76)がベンチに座っていると、佐藤輝は必ず視線を交わす。互いに笑顔で数秒目を合わせ、川藤氏がグッとサムアップポーズ。「グッドです!」。佐藤輝が元気に返すやりとりが、ひそかに恒例のあいさつとなっている。
川藤氏から「お前は難しいこと考えないんでええんや! 今日もベリーグッドと思うだけでええんや」と伝えられたことが始まり。少し調子が悪くたって、のびのびプレーしてほしい-。そんな大先輩からの想いがあった。「何か僕に他に言うことないですかね?(笑い)」。1度尋ねた際も「グッドと思うだけでええんや」とキッパリ返された。「ベリーグッドです!」とあいさつしていたこの日。宣言通り、思い切りの良い会心の一撃だった。
チームは5カード連続勝ち越し。貯金を今季最多19に伸ばし、再びセ・リーグの貯金を独占。2位巨人とは9・5差に広げた。またも4番の一撃で、豪快に週末を締めくくった。【波部俊之介】