
大好きな兄を超える旅が始まる。10日、秋田大会が開幕。2年連続8度目の夏の甲子園出場を狙う金足農のエース、吉田大輝投手(3年)も開会式に参加した。兄・オリックス吉田輝星投手(24)から「今年も甲子園に行けよ」と連絡があったことを明かし、18歳の誕生日に兄からもらったグラブで最後の夏に臨む。11日の初戦で由利と対戦する。
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大輝の最後の夏が始まった。金足農は昨夏の王者らしく先頭で威勢のいい声を上げながら堂々と行進し、佐藤晃真主将(3年)が優勝旗を返還した。吉田は「返したんじゃなくて1回預かってもらって、また自分たちが絶対とりにいくという気持ちがまた強くなりました」と聖地への思いを新たにした。
昨夏の甲子園は西日本短大付(福岡)との1回戦で、7回9安打5失点を喫して敗退。新チームになって室内練習場に「~忘れ物を取りいく~最強のチャレンジャー」と掲げたものの、昨秋、今春とも県大会では準々決勝までに消えた。6月18日の大阪桐蔭との招待試合でも6回8安打5失点。しかし、現在地を知ることでかえって負けん気に火がついた。
その翌日からの1週間の強化合宿を経て、徐々に調子を上げてきた。多い時で100球から140球を投げ込み「決して万全ではないですけど、試合を重ねていけば、アドレナリンも出ていい感じに持っていけると思います」と言う。最速146キロを誇る自信もよみがえった。
最高のエールも届いた。最近は連絡が途絶えがちと嘆いていた尊敬する兄から、夏本番前に連絡が来た。「輝星から甲子園行けよって。今年も行けよってきて。びっくりしました」。今大会で使用するグラブは、兄が甲子園を戦い抜いた時に使っていたものと同じモデルで同じ色。4月23日の18歳の誕生日プレゼントに、おねだりしてもらったものだ。
「2018年に優勝できなかった輝星の分も、気持ちも、全部グラブに込めて、いろんな人の思いも背負ってこの夏も戦っていきたい」。グラブに刺しゅうした「天下」を取る夏が動き出す。【高橋香奈】
◆吉田大輝(よしだ・たいき)2007年(平19)4月23日生まれ、秋田県潟上市出身。小学1年冬に天王ヴィクトリーズで野球を始め、天王中では軟式野球部と硬式のネオ・グリッターズでプレー。金足農では1年春からベンチ入りし23年秋季東北大会8強、昨年エースとして夏の甲子園出場に貢献した。179センチ、86キロ。右投げ右打ち。血液型はA。