
近隣校との統合で、本年度限りで閉校する八潮(埼玉)が、9日開幕の埼玉大会に、新座総合技術、三郷、三郷工技術、吉川美南の5校連合チームで出場する。遠山勝良捕手(3年)は、同校唯一の野球部員として汗を流してきた。佐川総監督(33)は「八潮高校にとって、最後の夏。少しでも多くの方に、彼の頑張りを見ていただけたら」と53年の歴史に幕を閉じる同校の卒業生たちに呼びかけた。初戦は10日、相手は細田学園(レジデンシャルスタジアム大宮)だ。
遠山の入部当初、部員は9人。しかし、2学年上の先輩らの引退後にチームメートの退部が相次ぎ、1年冬からは部員1人に。ある日、佐川監督が「野球部辞めたくならないのか」とキャッチボール中に尋ねると「いや、別にならないです」と即答。迷いはなかった。捕手として二塁送球の練習や、裏のネットに向かって打つ打撃練習。練習メニューが限られる中、ひたむきに練習に励んだ。
その姿が同級生の心を打った。野浦恵実マネジャー(3年)は「1人で頑張り続けている姿を見て、何か力になりたいと思った」と、バレーボール部を引退した6月中旬からマネジャーを務めている。バレーボール部も部員が1人だった時期があり「お互い頑張ろう」と、これまでも励まし合ってきた。遠山は「卒業生や地域の人たち、ずっと応援してくれていた人たちに、ここまでできるようになったとプレーで伝えたい。今年の夏は絶対に勝ちたい」と意欲を燃やし「佐川監督への3年間の感謝を体現できるように」。悔いのない夏にする。【山本佳央】