
<西武1-0ソフトバンク>◇4日◇ペイペイドーム
相手が今季7勝0敗のソフトバンク・モイネロで、西武が得点力不足に苦しみながら3連敗中だった。
特に難敵が相手となれば備えたことも仕掛けたことも、全てうまくはいかない。でも勝利につながった先制機だけ、かみ合った。
8回無死、この日1番打者に起用された滝沢夏央内野手(21)が追い込まれながら、しぶとく三塁へ内野安打で出塁する。
「いや、もう、なんとか出塁しないといけない。今日1番という打順だったので、1番としてまず塁に出ないといけないと。気持ちでヒット打ちました」
犠打で二塁へ進む。1死二塁、打席には3番の渡部聖弥外野手(22)が。4番のタイラー・ネビン外野手(28)も含め、どちらかの適時打を待つ場面か。
左翼席からチャンステーマ4が始まる中、モイネロが初球を投じようと投球モーションに入る。
完璧なタイミングで「スキがあったら行こうと思ってました」と決意していた滝沢が、三塁へスタートを切った。
モイネロを何とか崩そうと、西武ベンチも研究していた。西口文也監督(52)はその場面、何もサインを出していない。
「作戦? あれは違うよ。夏央が走った」
自分の判断で。
「そうそうそう。あぁ、セーフになるな~と思ったら…」
西口監督は「あぁ~、打ったよ~」と笑って続けた。滝沢も「まさか打つとは思わなかったんで」と“まさか”に少しばかり抑揚をつけて振り返った。
「スライダーかカーブを待っていました。1球で仕留めようと」という渡部聖が打った。
ライナーが二塁の頭をなんとか越えた。滝沢は三塁まで一瞬ブレーキをかけながら、瞬時に身を翻して、本塁へ向かっていった。
結果的にエンドランのように見える、2つの“思い切り”がかみ合った先制決勝得点だった。
滝沢は言う。尋ねてもいないのに切り出した。
「1番でスタメンって知って、もう、気持ち入ったっす。自分の体調管理不足で迷惑かけてたんで、なんとか勝ちに貢献したいなと」
1日、沖縄での試合後に熱中症と診断され、2日はホテルで静養。2日間でしっかり整え、走攻守で躍動してチームの7月初勝利にしっかり貢献。かみ合ったことで空気は変わるか。いずれにしても、滝沢夏央の夏が来た。【金子真仁】