
ソフトバンク野村勇内野手(28)が日刊スポーツの単独インタビューに応じ、打撃好調の理由を語った。今季は5月からスタメンに定着し、52試合出場で打率2割7分9厘、7本塁打、15打点、9盗塁の活躍。課題だった打撃は山川穂高内野手(33)の「究極の前さばき」という助言で開眼しつつある。正遊撃手の今宮健太内野手(33)は左脇腹を痛めて離脱中。プロ4年目の28歳が、走攻守で主力の穴をカバーする。【取材・構成=只松憲】
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野村は、唯一無二の武器を信じてバットを振っている。「今はそれが自分のスタイル」。今季、食事をともにすることが多い山川から「究極の前さばき」という助言をもらった。「他の人から見たらめちゃくちゃ前で打ってるだろうけど、自分的にはそれでないといけないし、そっちの方が打てるので」。まさに、目からうろこが落ちるような金言だった。
「究極の前さばき」とは文字通り、インパクトのポイントを投手側に寄せてスイングする打撃スタイル。以前は2ストライクまで追い込まれると、捕手側に引き付けて変化球を見定めようとし、逆に手が出ずに三振することが多かった。「だから逆にもっとタイミングを早く取って、もっと早くボールを判断する。むしろ判断しなくてもいいぐらいに目付けを前にして打とうと。それが僕は打ちやすいしハマっている」と明かした。
20日の阪神戦で村上のカーブを仕留めた左翼二塁打が、その打撃。チェンジアップと直球でカウント2-2と追い込まれたが「落ちる球に振らされたけど頭を整理した。もっと早くタイミングを取った。そうしたら外角の真っすぐもファウルにできたし、最後は浮いたカーブを打てた」。思考と動きと結果が、1本の線でつながっている。打率2割7分9厘、チーム2位の7本塁打につながる。
小久保監督は常々「自分はこれで勝負するんだという形を見つけないと、この世界は厳しい」と話す。試合で相手と戦う時間は短く、自分のスタイルを模索する時間は長い。「自分との戦いが明暗を分ける」という指揮官の言葉を体現しているのが今の野村だろう。「今のところは想定よりも打てている」。今宮の不在もカバー。「今宮さんが一番悔しいと思う。僕は自分の役割を果たせるようにしっかり頑張りたい」。22年には10本塁打を放って、39年の「鶴岡親分」こと鶴岡一人の新人最多本塁打記録に83年ぶりに並んだ。計り知れないポテンシャルを持つ野村が、リーグ戦再開後のチームを支える。
◆今季の野村 開幕1軍入りを果たすと、4月11日のロッテ戦(ZOZOマリン)で決勝弾となる今季1号ソロを放った。5月1日の日本ハム戦(みずほペイペイドーム)からスタメンに定着し、主に遊撃、二塁、三塁を守った。同6日の西武戦(ベルーナドーム)ではプロ初の1試合4安打。今季の7本塁打のうち、4本塁打は自身の第1打席で放っている。