
<日本生命セ・パ交流戦:広島5-2楽天>◇22日◇マツダスタジアム
広島中村奨成外野手(26)が、ひと振りで流れも空気も変えた。2点ビハインドの4回。無死満塁が2死満塁と局面が変わり、投手森の代打で巡ってきた打席だった。初球ツーシームに迷わずに振り抜いた打球は、ライナーで左翼フェンスを直撃。走者を一掃する逆転打に、三塁ベース上では何度も右拳を突き上げて喜びを爆発させた。
「ああいうところで代打を送ってもらうこともなかったので、甘い球を1球で捉えられるようにと入った。なかなか思うような結果が出せていなかったので、悔しさはあった」
今季すでに、ほぼすべての打撃成績で自己最多を更新している。それでも外野手争いの中、大盛の台頭もあり7試合連続でベンチスタート。「準備は常にしていた」。“感覚派”の打撃を維持するため、全体練習や早出以外でも人知れずバットを振った。19日ソフトバンク戦の代打弾に続き、この日は決勝打。限られた出場機会で存在感を示している。
先輩としての面目も保った。楽天宗山は広陵の3学年下の後輩。「ムネの前で打てなかったら、年末どんな顔して会えばいいのかなと。打てて良かった。あっちはスーパールーキーなんで、負けないように頑張ります」。自分はまだポジション争いに身を置く立場だと自覚し、表情を引き締める。
新井監督は殊勲打を「嫌な空気、重い空気だったんですけど、ひと振りで一気に変えてくれた。格好良かったですね、奨成」と笑顔でたたえた。4カードぶり勝ち越しで、交流戦をセ球団最高の勝率5割で終えた。リーグ順位も4位から2位タイに浮上した。【前原淳】