
アルビレックス新潟GK田代琉我(りゅうが、26)は「我流」のルーティンでゴールに鍵をかける。J2ロアッソ熊本から今季加入し、明るいキャラでチームにパッションを注入するシン守護神は、今季初出場となった11日の天皇杯2回戦、J1デビュー戦となった15日横浜F・マリノス戦で1-0勝利の立役者となり公式戦2試合でクリーンシートを継続中。敵地での21日アビスパ福岡戦も、プロ1年目から大事にしている試合前の習慣で気持ちをつくり、勝利に導く。
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冷静と情熱の間-。チームを最後方で支える田代は的確なコーチングと前向きな言葉で味方を鼓舞し、勝利後はタオルをグルグル回してスタジアムのファンをあおる「やんちゃ」でパワフルなGKの印象だが、内面は常に冷静で、フラットだ。
気持ちのつくり方はプロ1年目から続ける独自ルーティンにある。試合開始前、室内でのストレッチ後に好きな音楽を聴きながら「はだし」でピッチに入り、芝生の長さ、ボールの跳ね具合を確かめる。その次はスタジアムを見渡して照明の位置や日の入り方を確認。最後にゴールバーにぶら下がって体を伸ばしてから、手首などにテーピングを施す。「体がほぐれていないと気持ち悪い。(プロの)雰囲気を味わえている部分を含めてずっと続けている」と意図を明かす。
そんなルーティンも新潟ではなかなか披露できなかった。昨季J2で32試合に出場した熊本から完全移籍で加入した今季はここまで出番がなかった。「ふがいなさを感じていた」と言ったが、「腐ったら意味がない」。歯を食いしばり、自分の長所を新潟のスタイルにどうフィットさせるかを考えながら準備を続けた。
真摯(しんし)に練習に打ち込み、巡ってきたチャンスを生かした。今季初出場となった天皇杯2回戦の福山シティ戦で無失点勝利に貢献。樹森大介監督(47)の信頼をゲットすると、J1デビュー戦となった15日横浜戦では広い守備範囲を生かしたクロス対応とDFライン背後のケアでピンチを防いだ。短いパスでリズムをつくりながら後半に正確なロングフィードをMFダニーロ・ゴメス(26)に通すなど多彩な攻撃性も示した。「チャンスで結果を出せるかは人間力次第。自分は本番に強いと思う」。つかんだ定位置は、もう誰にも渡さない。
競技は違うが大リーグではドジャース大谷翔平投手(30)が打席に立つ時の独自ルーティンで本塁打を連発。新潟のシン守護神も独自の習慣で完封試合をどこまで伸ばすのか-。「チームと自分の良さを出していきたい」。敵地福岡戦もルーティンで備え、今季初の連勝に貢献する。【小林忠】
○…シュートストップに欠かせない重要なアイテムであるGKグローブは「エレボス」を約3年前から愛用する。サイズは「ぴったりが好み」と、10か10・5を選ぶ。この日は練習用の白黒だったが、公式戦は「オーダー」したアルビカラーでゴールを守る。