
<高校野球春季東北大会:仙台育英3-0聖光学院>◇13日◇ヤマリョースタジアム山形
自らとチームの雪辱を果たす一打だった。仙台育英(宮城1位)が昨秋大会の準々決勝で惜敗した聖光学院(福島1位)に勝利し、決勝に駒を進めた。8回に代打の土屋璃空外野手(3年)が適時二塁打を放ち、貴重な追加点をあげて逃げ切った。八戸学院光星(青森2位)は、15安打12得点と打線が爆発し、能代松陽(秋田1位)を下した。14日に決勝が行われる。
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拮抗(きっこう)した戦いが続く中、どうしても追加点が欲しい場面だった。1-0で迎えた8回、2死二塁の場面で土屋が代打に送り出された。「チャンスで回ってきたら決めてやると思っていました」。内角直球を気持ちで左中間に運んだ。「本当はスタンドにガッツポーズをしようと思ったんですけど」。喜びは抑えられずに、ベンチに向け拳をあげた。
悔しさを一打に込めた。聖光学院・大嶋哲平投手(3年)との勝負には大きな意味がある。昨秋の東北大会準々決勝で2-3で惜敗。土屋は大嶋から1安打放つも要所で抑えられた。今春センバツで8強と活躍する相手をみて「自分たちもあそこで勝っていたら…という言葉が選手の中でも飛び交っていました」。土屋は「絶対倒す」と野球ノートに記した。「借りを返すっていう思いだったんですけど、しっかりやることをやったら勝てると試合に臨みました」。チーム一丸で打倒聖光学院を実現した。
意識の変化が功を奏している。中学時代は長打力を持ち味にしていた土屋だが、高校入学後、同学年の川尻結人捕手や高田庵冬内野手(ともに3年)のパワフルな打力をみて「自分は飛ばせる方には入らないな」と肌で感じた。それから自分の理想像を追い求め、2学年上だった斉藤陽外野手(仙台大2年)に刺激を受けた。「小柄なんですけどしっかり捉えて、4番として安定して結果を出している」。長打力だけを追い求めず、コンタクト能力や対応力を日々鍛えている。
雪辱を果たし、決勝の舞台へ。「堅くならずに柔らかくなりすぎずに1球入魂でやっていきたいと思います」。13度目の春の王者へ向かう。【高橋香奈】
◆土屋璃空(つちや・りく)2007年(平19)4月7日生まれ、埼玉県出身。小学時は上高野クリーパーズ、中学時は春日部ボーイズでプレー。22年には侍ジャパンU15に選出され、U15ワールドカップに出場した。仙台育英では2年春から公式戦に出場。177センチ、79キロ。右投げ左打ち。