
<日本生命セ・パ交流戦:阪神8-2オリックス>◇7日◇甲子園
近本祭りや! 阪神近本光司外野手(30)が「日本生命セ・パ交流戦」の甲子園オリックス戦で今季7度目の猛打賞を飾り、球団日本人最速で通算1000安打を達成した。3点を追う6回は右前打で森下翔太外野手(24)の逆転3ランをお膳立て。最後は1点リードの7回2死一、二塁で一塁線を抜く適時二塁打を決め、難敵オリックス宮城攻略に導いた。チームは3連勝で今季最多貯金を13に増やし、2位とのゲーム差は今季最大の3・5。5カード連続の勝ち越しで、いよいよ独走態勢に入った。
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甲子園に輝く1000回目の「H」ランプ。近本は小さな体で大きな記念ボードを誇らしげに掲げた。
「何とか甲子園でという気持ちでした。皆さんの前で打てたのがすごいうれしい。プロ初安打からケガなくコツコツ続けてきた結果かと思います」。お立ち台で拍手喝采を浴びた。
残り3本から一気に決めた。3回、中前にチーム初安打。6回は無死一塁で右前打。森下の逆転3ランを呼び込んだ。そして3-2の7回2死一、二塁で一塁線を鋭く抜いた。貴重な追加点となる適時二塁打で節目に達した。この1本で難敵・宮城をKOした。
出場861試合目での1000安打は阪神の生え抜き最速。初代ミスタータイガース藤村富美男の864試合を抜いた。19年に長嶋茂雄のセ・リーグ新人記録を破る159安打。ペースを落とさず安打を連ねてきた。俊足の左打ちだが、バント安打狙いや走り打ちはしない。すべて芯でとらえにいった1000本だ。
「ケガなく、丈夫な体を作ってくれた両親、家族、トレーナー、スタッフ、コーチ、監督、選手、記者。影響のない人はいない。ファンの1人の声もすごく力になっている。自分だけの力ではないです」
21年から「年間200本」を明確な目標に定めた。それまで細かい故障が多く、肉体改造の必要性を実感。体に無理のない走り方や打撃フォームの探究に本腰を入れた。試合前も、試合後も時間をかけてストレッチ、ウエートトレ、有酸素運動など大量のメニューを毎日こなす。球団関係者はその意識を「今の選手でダントツ」と証言する。
兵庫の淡路島出身。幼少期は自宅の前の砂浜が遊び場。石や棒、空きビンで野球遊びをして育った。小2の時、兄2人とバスや電車を乗り継いで“対岸”にある明石市の親戚宅まで大冒険した。末っ子は小さな手に切符を握り締め、3連の電車に胸を躍らせた。少し外をのぞけば別の世界が広っていると知った原体験。大学時代の打者転向や、打撃の追究、本格化する社会福祉活動…。どんどん世界を広げ、その経験が野球人生の充実につながる。
この日は阪神を3連勝に導く珠玉の3安打。宮城を攻略しての逆転勝利で貯金は最多更新の13。敗れた2位DeNAとのゲーム差は3・5に広がった。
1000安打は近本にとっては通過点。「次は1001本目をすごく大事にしたい」。名球会への折り返し。大学、社会人野球出身の2000安打は古田敦也、宮本慎也、和田一浩、大島洋平しかいない。次の1000本も強く、しなやかに積み重ねるはずだ。【柏原誠】
▼通算1000安打=近本(阪神) 7日のオリックス2回戦(甲子園)の7回、宮城から右二塁打を放って達成。プロ野球323人目。初安打は19年3月29日のヤクルト1回戦(京セラドーム大阪)で小川から。近本は7年目、861試合で達成。試合数では99年イチロー(オリックス)の757試合が最速で、近本は日本人8位(外国人選手も含めると14位)のスピード記録。年数は15年マートン(阪神)の6年目が最も速く、日本人では64年長嶋(巨人)ら10人の7年目に並ぶ最速タイ。