
<日本生命セ・パ交流戦:巨人2-0楽天>◇7日◇東京ドーム
長嶋さん、ようやく勝ちました-。巨人は7日、「日本生命セ・パ交流戦」の楽天戦に快勝。3日に89歳で長嶋茂雄終身名誉監督が亡くなってから、4試合目で待望の初勝利を飾った。阿部慎之助監督(46)は恩人にささげる勝利を挙げ、安堵(あんど)の表情を浮かべた。チームも交流戦初勝利で連敗を5でストップ。長嶋さんのためにも、リーグ2連覇と12年以来13年ぶりの日本一へ向かって勝ち続ける。
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阿部監督が動いた。2点リードの9回2死2塁。楽天ルーキー宗山を迎えたところで、ベンチを飛び出した。右翼を守っていたキャベッジをベンチに退け、代わりに増田大を起用。守護神マルティネスが宗山を左飛に抑え、増田大に守備機会は訪れなかった。それでも、最後の最後まで最善の手を打ち、特別な1勝をつかみ取った。「これでホッとしちゃいけないんだけどね。連敗を止められたっていうのは、いいステップにしてくれればいい」と胸の内を明かした。
長嶋さんの訃報から3連敗と苦しんでいた。阿部監督は、この日の試合前ミーティングで1勝することの難しさを選手たちに伝えた上で「勝って(長嶋さんに)いいところを見せようというのは、言ってましたのでね」。ささげる勝利をつかみ取ろうと、改めてチームを結束させた。
監督の重責は監督になってみなければ分からない。長嶋さんは監督最終年の01年に当時プロ1年目だった阿部監督を開幕スタメンに抜てきした。「阿部監督」という立場になって「我慢だったり辛抱だったりっていうのが、すごく大変だったろうなというのも感じますし」と、24年前の長嶋監督の心中をおもんぱかった。今季はここまで長野、坂本、岡本といった長年チームを支えてきた主力を欠く中で若手を積極起用。日々の勝利を追求しつつも、かつてのミスターのように未来への投資も欠かさない。
そんな指揮官の思いに若手が1発で応えた。5回まで無得点の重苦しい雰囲気を24歳の増田陸が一変させた。6回2死から左翼席へソロ本塁打。我慢強く起用してきた若武者の先制打に、阿部監督は「もうホームランしかないかなと思ってたんだけどね。なかなかタイムリーも出ないし。本当、貴重なホームランでしたよね」とたたえた。
常勝チームを築き上げることが長嶋さんへの最大の恩返しとなる。その第1歩は、リーグ2連覇と13年ぶりの日本一。指揮官は「最後まで粘り強くなんとか戦って。最後1点でもいいので多く取って、勝てばいいので、それを目指して頑張ります」と力強く言った。【水谷京裕】