
<日本生命セ・パ交流戦:ロッテ2-1巨人>◇5日◇ZOZOマリン
3日に89歳で死去した天国の長嶋茂雄終身名誉監督にささげる勝利は、またもお預けとなった。巨人は「日本生命セ・パ交流戦」のロッテに延長10回サヨナラ負けし、交流戦開幕2連敗。それでもサード門脇誠内野手(24)が攻守でハッスルプレーを魅せれば、今季チーム唯一の全試合出場を続ける吉川尚輝内野手(30)は一時同点となる3号ソロ。先発山崎伊織投手(26)は9回3安打1失点、113球の熱投を見せた。敗れはしたが、長嶋さんの“魅せるプレー”“リーダー性”“気迫”は、着実に受け継がれている。
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随所でミスターの魂が宿った。まずはサード門脇が魅せた。1回裏、ロッテ1番の藤原の鋭い打球を横っ跳び。思い切り伸ばしたグラブにボールが収まった。長嶋さんの“魅せる守備”をほうふつとさせるプレーで、いきなり巨人ファンを沸かせた。
約1年前の24年5月3日。球団創設90周年記念特別試合「長嶋茂雄DAY」として行われた阪神戦(東京ドーム)で2安打3打点と活躍。5回終了時にグラウンドへ登場した長嶋氏に勝ち星を届けてお立ち台に上がった男は「巨人のサードといえば強打者のイメージがあると思いますが、なんとか自分の味を見失わずにやっていきたいと思います」と、試合のリズムをつくった。
吉川はチームリーダーの役割を全うした。チーム無安打で迎えた5回1死。2ボールから149キロ直球を振り抜いた打球は一時同点ソロとなり「同点に追いつけて良かった。準備をして、あと(チーム)一丸となって」。短い言葉にチームを引っ張っていく“リーダー”としての決意がにじみ出た。今季はチーム唯一の全試合先発出場。岡本、坂本らの主力を欠く中で、ミスターのように三塁から…ではないが、本職の二塁からチームの先頭に立ち続けている。
マウンド上では山崎が“気迫”を継承した。3回1死から藤原に87キロのスローカーブを右翼席まで運ばれ先制点を献上。それでも緩急自在の投球で追加点を与えなかった。今季初めて9回のマウンドにも上がると、最後は2死から山本を153キロ外角直球で見逃し三振に打ち取った。「投げている感じが良かったので、すごく相手と集中して勝負をしっかりとできてたなと思います」。気迫十分の113球で、仲間を鼓舞し続けた。
それでも、チームは今季2度目の4連敗。天国の長嶋さんにささげる勝利は、またも持ち越しとなった。だが、長嶋さんだって全てが順風満帆だったわけではない。プロ1年目のデビュー戦は4打席連続三振。計15シーズンの監督時代も、2度の日本一に輝いた裏で、889回負けた。だが、ミスターは常にミスターであり続け、ファンを魅了し続けた。その魂を継承する選手たちが6日、本拠地・東京ドームで「3」度目の正直に挑む。【水谷京裕】