
<連載1:4番川尻結大(3年)>
春の東北王者を決める戦いが幕を開ける。第72回春季高校野球東北大会(10日開幕、山形)を前に、東北6県版では注目出場校や選手を全4回にわたり紹介する。第1回は仙台育英(宮城)の3選手。最速145キロ左腕、エース吉川陽大(あきひろ)投手(3年)を筆頭とする「投手王国」が勝利のかぎを握る。打線をけん引するのは4番川尻結大(ゆいと)捕手、大型スラッガー高田庵冬(あんと)内野手(いずれも3年)だ。【取材・構成=木村有優】
◇ ◇ ◇
まさに捕手の理想型。4番に座る川尻は、長打力と対応力を兼ね備え、広角に打ち分ける技術も持ち合わせる。「昔からバッティングは得意でした」と自信あり。須江監督も「(右左)どっちにもホームラン打てますし、150キロでも、110キロでも打てます。仙台育英の中では、近年ナンバーワン右バッターです」と称賛する。
今年4月には侍ジャパンU18日本代表候補選手強化合宿に参加。右肩の痛みにより、本調子ではなかったが、収穫は山ほどあった。現在の高校球界を代表する大阪桐蔭・森や明徳義塾・池崎とバッテリーを組んだ際には「それぞれの投手が自分を持っていて、セオリーみたいなものがありました」と新たな発見もあった。
川尻は高1の6月に内野手から捕手に転向。初めて球を受けたのは、立正大に進んだ、最速150キロ越えの仁田陽翔投手だった。「怖くてしょうがなくて…。とにかく球を受けて慣れました」と、恐怖心をなくすところからのスタートだった。それから約10カ月後の2年春、捕手としてスタメンをつかんだ。「今ではシンデレラストーリーです」と口にするも、川尻のたゆまぬ努力が身を結んだ。
辛いときには「仙台育英」に来た意味を思い出した。「練習してもうまくならないですし、ブロッキングで(体に)当たって痛いのに、パスボールをしてしまって。『何のためにやっているんだろう』と思っていました」と当時の心情を吐露。それでも「ここ(仙台育英)に来たからには、やるしかない」。地元愛知から覚悟を持って進学した自分を奮い立たせてきた。
今の課題は守備力。さらに上の舞台でも通用する「4番捕手」を目指し、守備を極め抜く。
◆川尻結大(かわじり・ゆいと)2007年(平19)8月6日生まれ、愛知県名古屋市出身。小2時にツースリー大府少年野球クラブで野球を始め、中学時代は愛知名港ボーイズでプレー。仙台育英では1年秋に初のベンチ入り。172センチ、84キロ。右投げ右打ち。50メートル走6・5秒。好きなアーティストはAimer。