
巨人軍終身名誉監督の長嶋茂雄(ながしま・しげお)さんが、3日午前6時39分、肺炎のため、都内の病院で亡くなった。89歳だった。読売新聞グループ本社、読売巨人軍、オフィスエヌが連名で発表した。
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現役時代、長嶋さんと対戦した経験がある元大洋(現DeNA)の小谷正勝氏(80)はかつて、長嶋さんとの対戦をこう振り返った。
「強打者でも、長嶋さんはタイプが違った。王さんと同じようにアウトコース、自分の一番いい球で攻めるのが大原則だったが、打席の中で何を考えておられるか分からなかった。セオリーを軸に、醸し出す雰囲気から狙いを読み取り、ひらめきで勝負した」
通算は30打数7安打、打率2割3分3厘で本塁打はなかった。
「一流の打者には自分のストライクゾーンがあるが、王貞治さんもそうだったが、長嶋茂雄さんも独特のゾーンを持っておられた。インコースが高めにボール1個か1個半、ずれていた。いわゆるツボで、投げれば高い確率で打たれた。だから、長嶋さんとの対戦ではアウトコース、それも低めにしか投げなかった」
長嶋さんとの対戦の中で今でも記憶に残る対戦が1つあるという。
「ある時、長嶋さんが『小谷が出てきたら、カーブしか狙っていないよ』と言っていたと人づてに聞いた。確かにカーブピッチャーと自負し、多少の自信はあったが『本当か?』と耳を疑った。『打たれて当たり前』と開き直って勝負していたので、思い切り腕を振って真ん中に直球を3つ続けたら、本当に見逃された」
小谷氏は「独特の感性、オーラを持つ方で狙いが読めなかった」と話した。