
<中日1-5阪神>◇25日◇バンテリンドーム
阪神が中日を振り切って首位を守った。1-1の9回、坂本誠志郎捕手(31)が決勝の2点二塁打。5回に先制のスクイズ、さらに5年ぶりの盗塁に「本職」でも好リード、そして2年ぶり6度目のV打と、走攻守に獅子奮迅だった。6番以降で計5個の犠打を決める全員野球で2カードぶりの勝ち越し。2位巨人とは0・5ゲーム差、3位広島とは1差、3位DeNAとも1・5差。依然続く「混セ」の主役は譲らない。
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坂本は迷いを断ち切っていた。1-1の9回無死二、三塁。5回に先制スクイズを決めただけに、またスクイズを警戒されるか、その逆か。ベンチで藤川監督とも話し「ゾーンを上げて、最初からいこうか」で一致した。勝負どころでマルテはやはり、初球から勝負に来た。真ん中の154キロを迷わず振ると、打球は左中間を抜けていく。お祭り騒ぎの三塁側ベンチへ、照れくさそうに手を上げた。
「先に点が取れて、その後すぐに追いつかれちゃって。僕のミス(捕逸)も絡んだので申し訳なかった。最後は、それも取り返してやろうという思いでした」
陰ながらチームを支える扇の要が、たまには「攻撃の要」になってもいい。3打点は昨年4月30日の広島戦以来。7回には5年ぶり通算2個目の盗塁というおまけもついた。新人伊原を6回1失点に導き、湯浅、岩崎も好リード。走攻守で背番号12が光り輝いた。
生傷が絶えず、身も心も疲弊する仕事だ。今年、心の支えは「フィリーズの下手投げ投手」こと青柳晃洋。プロ同期の盟友と、ほぼ毎日LINEでやりとり。無類のメジャー好きだけに、米球界の流行や最先端の情報を聞けるのがたまらない。たとえば配球。「初球、しっかりと真ん中に投げたら高確率でいい結果になるってデータがあるらしい。教えてくれたあいつが一番真ん中に投げないんだけど(笑い)」。9回の決勝打はまさに「初球のど真ん中」。何かの手助けになっていたかもしれない。
前回3連敗した名古屋で2勝1敗とやり返した。2位巨人、3位広島、4位DeNAがすぐ後ろに迫る混セは、まだまだ続きそう。坂本はきっぱりと言った。「若い投手が多いけど、僕らが足を引っ張っちゃうことも多い。一緒に成長しながら強くなって、秋に一番大事なところで結果が出せるようなバッテリーでいたいと思っています」。ペナントレースの厳しさも、優勝の味も知る男は、どんな形でもチームに貢献する気構えでいる。【柏原誠】