
あの“甲子園モンスター”が再来した。巨人浅野翔吾外野手(20)が雨中の甲子園で首位阪神に襲いかかった。4回無死一、二塁から左翼線への適時二塁打で均衡を破った。高松商(香川)時代の22年夏の甲子園以来となる聖地での打点をマーク。今季初の適時打でよみがえると、なお1死三塁から井上の遊ゴロで本塁に突入。間一髪のヘッドスライディングで追加点を奪った。ユニホームを黒土で汚しながら暴れた。チームは接戦を制し再び貯金1、今カードを1勝1敗の五分に持ち込んだ。
◇ ◇ ◇
猛然と頭から突っ込んだ。舞台は高校野球からプロの世界に変わっても、“甲子園の浅野”の勢いは変わらない。4回1死三塁、打者井上の打球がゴロになるのを判断すると、一気に三塁から本塁へ激走した。遊撃手からボールが返球される。阪神梅野のタッチの下をかいくぐるようにヘッドスライディングで滑り込み、審判の「アウト」にも確信を持ってセーフのジェスチャーでアピールした。
阿部監督は即座にリプレー検証のリクエスト。繰り返される映像に、雨がっぱ姿の甲子園の観客が沸きに沸く中、判定は覆ってセーフ。貴重な2点目の追加点に、ベンチ前でガッツポーズでほえて、跳ねた。
ユニホームは土に染まっていた。21年、22年の夏、胸に「TAKAMATSU」の文字を抱いた高松商時代と、その姿は同じだ。甲子園の舞台に2度挑み、5試合で17打数11安打、打率6割4分7厘、4本塁打、8打点を挙げた。「ユニホームは高校生なので1枚しかない。それをドロドロにしてプレーして。1球1球に球場がどよめいて、スタンドからブラスバンドで全校応援もしてくれて。最高の思い出」と今も胸に刻む場所。
力がみなぎらないはずがない。4回、自らが生還する前に、プロとして甲子園初打点を挙げた。無死一、二塁からビーズリーのスライダーを捉え、左翼線への適時二塁打で均衡を破った。試合前に阪神森下から譲り受けたバットでの15打席ぶり安打に「追い込まれていたので、くらいついていきました」。高校以来の聖地での打点となった。
今季は4月25日に3軍に降格した。それから2週間で、2軍、1軍と駆け上がり、10日ヤクルト戦(神宮)では今季初スタメン、初安打、初本塁打で勝利を引き寄せた。自問自答の日々に、思い返したのは、高校時代の気持ち。「自分が引っ張っていく」。甲子園で暴れまくったあの頃のように。真夏に汗と土にまみれた姿から3年。雨と土にまみれながら、仲間を引っ張った。【阿部健吾】